王立球技場


ドロロン宰相 春の観戦記




4月23日(土)At王子スタジアム 関西学院大学vs日本大学

    1Q 2Q 3Q 4Q 計
関学大 14  6  0 14 34
日本大  7  0  0 14 21

KGの春初戦、ということで楽しみにしていたのだが、残念ながら先行きに不
安を抱かせる内容だった。
5本のTDの内、インターセプトリターンが1本、パントリターンが1本、同
じくパントのビッグリターンによるゴール前からのオフェンスで2本と、実質
オフェンスがドライブして挙げたTDは1本のみ。

QB・・・×
出原・・・×
三原・・・△
1試合だけでの評価なのでこれからまだ変っていくと思われる(というか、変
ってくれないと困る)が、この試合で出場した両QBとも課題山積の状態だっ
た。
まず出原だが、残念ながら昨年からの向上が全く見られない。むしろ1年生の
頃に比べると思い切りのよさが影をひそめてしまい、自信なさげなプレーに見
えた。特に印象が悪いのが、これまでに何度も失敗しているRBへのヒッチや
トスをことごとく失敗している点である。取り立てて昨年から何ら変化も見ら
れず正直このままではスタート起用は厳しいだろう。

三原
まだターゲットに投げるのに一生懸命という印象が強い。
コントロールや遠投力では出原を上回っているものの、無造作に放ってしまう
シーンが見られ万全の状態ではない。雑な部分がまだまだ見られる。
ロングパスのセンスがピカイチなのは、レシーバがSFを抜くのを読んだ上で
上手くターゲットに落としにいくパスを再三みせている事から理解できる。よ
く見えているし、自分のパス能力もよく分かっている。しかし決めきれない。
そんな感じだ。(2年の春の尾崎がこんな感じでしたが。)
表現を変えると練習不足。

OL・・・×
この試合の苦戦の最大の原因は攻守ラインの不調にあるといってもいいと思う。
特にOLは全く押すことが出来ておらず、ランプレーが実質完封されていた。
後述するが右OT#50は現時点では論外。最巨漢がDEに再三回りきられて
QBへのプレッシャーを右から許す状況では何もできない。OLの整備は急務
だが、まだまだ時間がかかりそうだ。

RB・・・△
ラインが完敗している状況だったので、RBの評価は難しいが、ユニットの一
部としてみた場合、残念ながら現時点では合格ラインに達しているとはいい難
い。エースは2年生になって番号を変えた#2あたりだが、個人的にはサイズ
のある#33のTB復帰を期待している。

WR・・・○
この試合、唯一高く評価できるのが若手WR陣である。高等部出身の#81榊
原、#91萬代、シュアハンドの#86水原、高校未経験ながら卓越したスピ
ードが魅力の#85秋山と、いずれもいい動きを見せており、今後に期待が持
てる。ただ、この試合ではTEがセットすることが無く、韓や#33三浦の出
番が無かったため、まだ分らない点があり手放しでは喜べない。このメンバー
に#20三浦、出場を控えた俊足の多田羅、実績のある美田(ともに3年)な
どもおり、レベルも人数も十分な陣容ではある。

P・・・○
キッカーの#11小笠原が兼任しているが、高さが出てきて結構いい感じにな
りつつある。高く、遠くに蹴れているためにカバーチームがリターナーに間に
合うようになっており、いいタックルを決めることが出来ていた。風向きもあ
るがキックオフのタッチバック3回はあった。

ディフェンス
DL・・・×
×、というか疑問なのだがどうしてわざわざ#58庭野をOLからコンバート
してきて、生田をOLにコンバートしたのだろうか。おかげで両名とも戸惑い
が見て取れ、現時点では決して有効なコンバートとは思えないのだが・・・
又、#52上村をNGに置くことにも疑問がある(#57市村が本格復帰する
までの緊急避難的措置かもしれないが)基本的に上村はエンドにおいてガンガ
ンプレッシャーをかけさせるほうが活きると思うのだが、どうだろう。
他に国本、中山らを投入していた。3メンラッシュに終始した為QBに有効な
プレッシャーはかからずしまい。まだまだ整備には時間がかかりそうだ。

LB
ILB・・・△
OLB・・・○
NGがコントロールされていただけに、ILBには厳しい展開となったが、残
念ながら2人とも目立つシーンが無かった。タックルも大部分がスクリメージ
を越えてからのものだったし、一発で仕留めたシーンも無かった。
要所での井上の動きが良かったが、佐藤、柏木とも目立った活躍はなし。
逆にOLBの2人は合格点。特に#12吉岡はキックカバーと合わせ2サック
4タックルを決めており、アウトサイドのパスラッシャーとしてスピード感の
あるプレーを見せていた。逆サイドの#4橋本はインターセプトを決めており、
プレースタイルの違う2人がそれぞれの持ち味を見せてくれた。

DB・・・△
昨年LBとしてプレーした#16河合をSFに戻し、もう一方のSFには2年
生の#45磯野を配した布陣だが、カバレッジに戸惑いが見られた。磯野はイ
ンターセプト、パスカットなども見せており、今後に期待できるものの、現時
点ではまだ学ぶことが多い感じ。CBはマンカバーにまだ難がある。
岩城をCB,OLB。磯野もCB,SFで起用。河合はOLB,SFと、複数のメ
ンバーでポジションを入れ替えてグルグル回していた。全般的にLBとDBの
連携が全くの未完。逆にそこまで期待しておらず「色々適性を試した」としか
説明のつかないレベルでした。

守備は全般的に押されており、キッキングの活躍がなければKGは負けていま
した。ランはトラップも含めた日大SGからのランが普通にゲイン。パスはS
Fの間に落とすポストと、SFを引っ張り上げて手前に落とすパターンを再三
許してしまいロングドライブを許している。

層の薄いDL陣と数の多すぎるLB。ポジションが決まらないDB。全般的に
連携不足。といったところでしょうか。
しかし本当にLBは数が揃いすぎ。橋本、吉岡、柏木、井上、佐藤、武島、渡
部これに三宅が加わり遊馬、河合も投入があるだろし、岩城も試されてる。
結論付けるのには早すぎるが、「LBからDLへのコンバート候補の決定」と
「DB(というよりCB)を早期に固定してコンビネーションを構築できるか」
の2点が秋に向けての守備の注目点でしょうな。

K・・・△
#11小笠原が昨年に引続き担当。距離は出るようになっているが、TFPを
外すのはそろそろ止めて欲しい。

全体的に未整備の印象が強すぎて、見ていて面白い試合とはお世辞にも言えな
かった。特に反則の多さ(しかもつまらない反則)には辟易させられた。オフ
サイド連発(しかも2列目以降が)、インターフェア、フェイス、交代違反な
ど。特に守備の反則が目立った。まあ春だからやむをえないが、一方の日大は
反則がきわめて少ない。仕上がりの差は歴然だった。いや仕上がりうんぬんも
あるが日大に良い兆しがある。

この試合では、非常に統率がとれているのが確認できたし、何より集中力が出
てきている。(戻ってきたと言う方が正しいか。)選手層が厚くなったせいも
あるが、ここ数年よく見られた後半バテて突き放されるケースはもう無いだろ
う。ハドルの切れ、レシーバの玉際の強さが戻ってきた一方で、3rdロング
で両TEのフランカーIからカウンターオプションでダウン更新を狙うなんて
事もやりだした。またエンドゾーン手前からリバースまでやってしまう。これ
はかつての日大にはなかなか見られなかった試みだ。
以前の良いところを巧く引き継げでいるのではないだろうか。同時に新しい試
みと、上手く混ざりだしたような印象をもった。チームカラーは明らかに変わ
った。しかし強さはしっかりもっている。おそらく「強いチームを普通に作ろ
うとしている」のだと思う。目立ったのは1、2年生の数の多さとその出身校。
そしてコーチの顔ぶれだ。須永、金井、佐藤、秋山、渡辺、箭筈(やはず)。
かつての日大を知り、また社会人でも選手、コーチとして活躍したメンバーが
そのまま戻ってきた。今季の間にどこまで力を与えることが出来るのか不明だ
が、彼らが戻ってきたことは色んな意味で大きい。この日の日大は、かつての
(いや日大の伝統的な)プレーをなぞって「復習」しながら、そこから新しい
物をなんとかして作ろうとしているように見えた。
要所で見せたセットバックのプレーはバリエーションをつければおもしろい。
ターゲットとしては#25,#19あたりが要注意か。QBはパスは#11、
ランは#14。でも期待の左腕ルーキー#16山口を見てからでないとスター
タは決められないだろう(この日は出番なし)。かなりバルクアップされてお
り大変期待している。攻守ラインともサイズは大きくは無いが十分に機能して
おり、現時点で関東を勝ち抜くのには大きな問題は無い。
総じて攻守とも仕上がりは順調だが、唯一キッキングのカバーは問題として残
った。クリスマスボウル組がそろって加わった新フェニックスだ。今年プレー
オフに出られれば、来年は間違いなく甲子園に登場するだろう。




4月24日(日)At関大グラウンド 関西大学vs法政大学
    1Q 2Q 3Q 4Q 計
関西大  0  7  7  0 14
法政大  7  7 10  0 24

関大、法政ともに既に下位ブロックのチームと1試合をこなしており、これが
春の第2戦になるわけで、特に関大が昨年の課題であった攻守ラインの整備を
どこまで進めているのか、をチェックする為に千里へ出張。
結論から言って、攻守ともにラインは未整備のまま残されている状況で、個人
能力に頼ったオフェンスは相変わらず。TDを挙げたプレーも法政のMLBと
SFがまともなら、少なくともあれほどの独走にはならなかったはず。
反対に関大のディフェンスは4−3プロを採用しているのだが、MLBの判断
に問題があり、インサイドのランの時に法政OLのブロックに巻き込まれるシ
ーンがよく見られた。

QB・・・△
1試合を通じて#14森口が務めた。遠投力はこれまでの碇、堤に比べて高い
が、レシーバーとの呼吸が今ひとつあっていない印象がある。主たる原因がW
Rにあるのか、森口が無理投げしているのかはもう少し見てみる必要があるが、
今のままでは勝負どころでパスプレーを選択するにはリスクがあり過ぎる。
ただ、コントロールに関してはかなり安定しており、タイミングさえ修正でき
れば面白い存在になる。

OL・・・×
押せてない、動けてない。ショットガン採用の意図が分らない。せっかく#2
2中西という絶対的なRBを抱えているのに、彼がコンスタントにゲイン出来
ないのはやはりラインのパフォーマンスに課題があるからだろう。
まず「当って押す」ことが出来るようにならなければそこから先のラインの成
長は見込めないだけに、「押せる」ラインの育成を図って欲しい。
サイズ的にはかなりの大型ラインだけに、「押せる」ようになれば先々楽しみ
が出てくる。

RB・・・△
#22中西はともかく、その他のRB陣のイメージが今ひとつ浮かんでこない。
中西のプレーでは平均7〜8y獲得していると思われるが、その他のメンバー
はあまりプレーさせてもらっていない印象が強い。
最も、これについてはラインの問題もあるので一概にRBの責任には出来ない
が。

WR・・・△
「ポスト大谷」は恐らく難しいので、如何に多くのターゲットを揃えられるか、
ポイントはそこになりそう。あと、ランプレー時のブロックももう少し丁寧に
やる必要あり。

P・・・◎
この試合、パントは素晴らしかった。飛距離、滞空時間ともにほぼ理想的。

DL・・・△
ラインそのもののパワーはそれほど悪くないのだが、DTがコントロールされ
ていたのが痛い。おかげでMLBのカバーする範囲が広くなり、カットバック
されて一気に抜かれるシーンが散見された。

LB・・・×
関大ディフェンスのアラインメントは4−3プロなのだが、DLがコントロー
ルされる為にMLBの前が広く開くシーンが結構あった。プロで守る時は、M
LBは抜かれないことを前提にキャリアーのルートを確認してからタックルに
いくべきなのだが、この試合では#4の判断が早すぎて、DLと一緒にブロッ
クされるシーンが多かった。そのため、中央付近のランがかなりゲインしてい
た。2年生だけにまだまだ学ぶことが多い。

DB・・・△
印象が薄い。とにかく法政にパスを通されまくっていた印象が強い。

全体的に、関大のオフェンスはランパスともに一発ロングゲインを狙うパター
ンが多く、特に1STダウンのプレーが止まると、次のプレーで挽回しようと
思うのか、ロングパスを多用するシーンが多かった。
一発で挽回できるならこれほど楽なことは無いが、そう甘い話はないわけで、
ロングゲインを狙うほど成功率も下がるのは当たり前だろう。
1STダウンのプレーが止まったなら、「2回で10y獲得する」ことにまず
頭を切替えるべきで、いつまでも「3回に1回成功すればOK」的な発想を
一度捨てる必要があるのではないだろうか。
幸いなことに中西という平均で10y近く獲得できるRBとコントロールの悪
くないQBがいるのだから、ボールコントロールを考えたプレーの組み立てを
検討してみてはどうだろうか。
少なくとも一発に頼っている間は本当の意味で上位チームを喰うことは出来な
いと思われる。

以上



ボヨヨン王国
BOYOYON KINGDOM