
2004年第5節観戦記

今回は多忙の為、カードを限定します。
立命館 VS KG
ボ あらためてミスの恐ろしさを実感したよ。
ド 両チームで発生したミスはいくつかあったのですが印象に残るのは、
K G:ラストシリーズでのファンブル
立命館:パント時のキャッチミスからKGに攻撃権を与えてしまったプレー
ですか。
ボ それと、これはもう取り上げてもしょうがないのだが、不用意な反則だな。KGは最後のファンブルは致命的ではあったが、それ以外のミ
スは結果的に乗り切ってしまって目立たなかった。立命は試合に敗れた分目だってしまうのだがWRの2度のフォルススタートなど、イー
ジーなミスが散見された。最後のFGトライへのドライブはオンサイドキック時の反則で20Yの罰退となったが...。
ド 実はその前に交代違反で5Y下がっています。ハンドチームの交代のミスなのですが、この5YがあればFGは決まっていたのではないで
すかね。それと見逃しがちですがね...。
ボ ふむ。
ド 「立命館最初のFG失敗」これは大きかったですよ。その後の熱戦のため忘れ去られたようになっているが、立命館にとってこの最初のF
G失敗はかなり響きましたぜ。
ボ もーいかにシビアな勝負かということだよ。勝者、敗者の差は本当に紙一重なのだとつくづく感じた。それだけ痺れた試合だったよ。
ド なんか細かい事なんかドーでもよくなっちゃいますな。
ボ 外野は重箱の隅を突きたがるものだが、こんな試合みせられたら完全に沈黙せざるを得ないな。
ド そうは言っても、ここは一つ王国として感じたことを順番にまとめてみましょうや。
「QB木下」の功罪
ボ 当然のことながら、彼は立命館オフェンスのキープレーヤーとして「両チームに」認識されていた。この試合では(事前に準備していたで
はあろうけれど)彼をQBとして起用してきた訳だが。
ド しかしながら、この起用については疑問が残ります。木下と相対するチームにとって、最も恐ろしいのはなんだと思いますか?。
ボ そりゃー個人的には、彼がオープンフィールドで変幻自在に動くことが最も恐ろしいさ。
ド でしょ。オープンフィールドでの木下の能力はまさにファンタジスタの称号にふさわしく、一瞬でもフリーの状況を作ってしまうと一気に
エンドゾーンまで持って行ってしまう訳ですよ。しかしながら、ラインの後ろでスナップを受け、そこからランニングホールを見つけて走
る場合にはルートが限定されてしまいます。更に全てのディフェンダーが前から木下を追えるだけにフリーのシチュエーションにはなり難
いですよ。
ボ パッサーとしてはどうだったの。高校時代のプレーをよく知らないのだが。
ド パッサー木下としてみた時、残念ながらそれほどの脅威にはなり得ないですな。この点については高校時代からはっきりしていました。高
校時代QBを務めたのはあくまでNO.1アスリートだったからで、パサーとしての能力の高さからではないですね。
ボ 池野で完成されたタイミングとコンビネーションを捨ててまでアスリート能力に賭けたというのは正直解せないね。パスの脅威は池野が戻
ってきてからのほうがあったよ。実際。
ド なもんでQB木下ではパッシングシチュエーションになったときにKGのディフェンダー陣は余裕を持ってパスカバーすることが出来たと
思います。
ボ 考えてみれば当然だね。本来最も警戒すべきターゲットがダウンフィールドではなく、バックフィールドにいるのだからね。それとさ、Q
Bのランを期待しての起用だろうけど、ハードヒットによる消耗を増した点は見逃せないと思うぞ。
ド もともと当たり強い選手ではないでしょ。当たる必要の無い選手だからなんですけど(笑)。それに、それでなくても病み上がりですし、
リターナとしても投入されている訳でしょ。結果、最後のFGに向けたドライブの途中でサイドラインに退いてしまったです。
ボ この試合、QB池野が積極的に走るプレーが増えたけど、QBに走らせて勝つ事を考えたのかもね。であれば木下投入もわからんでは無い
が、でもどうせやるなら木下はWRに専念させては走らせるならQB池野、渋井の併用の方が良かったと思う。悪い方へ作用してしまった
のじゃないかなぁ。少なくとも良い方向には作用しなかったと思う。
「守備のキープレーヤーをつぶせ」
ド 対戦相手から見たとき、立命館守備陣のハート&ソウルは間違いなく紀平であり、これに谷野を含めたDT2人です。これまでのリーグ戦
では、決して動きがいいとは言いがたいLB陣をカバーして中央付近のプレーを潰し続けてきました。
ボ 逆にいえば関学にとってみれば中央の2人にプレーさせないようにさえすれば立命館ディフェンスに綻びを生じさせることは不可能ではな
い、と考えた。
ド このアプローチでで思い出されるのは01年のライスボウルですな。あの時のKGオフェンスのコンセプトは「シンゾーとマーサを振り回
せ」でした。
*詳細はKGのHPにある小野コーチの「THE QUARTER」を参照。
ボ 今回のオフェンスコンセプトもこれに準じるものなんだろうな。
ド そのために(自分たちが先にばててしまわない為に)QBタンデムを採用したと思います。更にバックフィールドもどんどん入れ替えまし
た。
ボ 強力なフロント陣を振り回し消耗戦に引きずり込む。その為に徹底してオープンを突く。これをノーハドルで行う。ラインの消耗を防ぐ為
QBロールを用いる。失敗を承知でスプリントから投げさせる。QBの消耗を回避する為QBをスイッチさせる。同様の目的でスピードス
イープなどFL陣にオープンを突かせる。同様にこれらのバックスを頻繁に交代させる。守備が消耗しはじめた段階で、タテでの勝負を混
ぜ始める。そしてこの勝負は全てQBのムーブメントの逆を突くものである、と。
ド そこで気になるのが立命DL紀平のTE起用なんですよね。両面やった分、さらにバテたような気がするです。後半はまったく攻撃につい
て行けて無かったように見えました。
ボ TEとしてはショートヤーデージでのブロック要員ではなくレシーバとしての活躍も視野に入れた起用だ。結果的に消耗に結びついたので
はないかな。試合途中から目に見えて動きが悪くなっていったよな。
ド ここでも裏目に出てるような。
ボ しかしKG攻撃の見せたプレーは考えれば考えるほど理にかなったプレー群だったよな。
ド それともう一つ大事なのは「相手に考える時間を与えるな」という点を実行し続けた点ですよ。もはや関学のお家芸とすら言えるようにな
ったノーハドルからの連続アタック。この試合ではついに1試合を通じてゴール前での2回以外は全てノーハドルで乗り切ってしまいまし
た。
ボ こんなんアリか?というようなOL以外6人全とっかえでもノーハドル。リストバンドをつかったとは言え、プレー間違いのミスなんて無
かった。
ド コイツらどんだけ練習してんねんって思いましたよね。
ボ これまでの秋の試合でミスでる度「コイツら練習してへんやんけ」と思ったのだが、撤回します(笑)。ちなみにこの試合のスカウティン
グビデオはさぞかし長時間になっているだろう。1時間30分程度か。理由は簡単。ハドルブレイクをしないので、どこから回していいか分
からないからダダ流しで撮影するしか無いからであーる(笑)。
ド まービデオを見るのも大変でしたよ。それとこのノーハドルも含めたKG攻撃の「タイムマネジメント」の徹底も評価すべきですね。如実
に出たのがKGの最後のTDドライブですよ。
ボ #8のインターセプトと#19のイリガルブロックで自陣深くからだったんだけど。#14がキープして一回OBに出た以外は全てインバ
ウンズデッド。
ド もー王国VTRで、審判が腕をぐるぐる回すたびに皆で「はい、又、インバウンズ♪、インバウンズ♪」とうるさい事、うるさい事(笑)。
OBに出ないという事が徹底されてましたよ。わざと滑り込む。当たられても耐えてインバウンズで倒れる、とね。
「FOOTBALL IS LINE」
ド この試合、なによりも嬉しかったのはKGラインの復活でございます、ハイ。
ボ 同感だ。ノーハドルを続けるKGオフェンスを見ての最初の感想は攻撃ラインの奮戦ぶりだった。とくに彼らの精神的、肉体的なタフネス
さと集中力の凄さ。
ド バックスはQBを含めてプレー毎に交代をするのですが、その間攻撃ラインはLOSに並んで立ったままでしょ。これを一試合通じて実践
し続けました。本来であれば終盤にミスをしたり反則をしてしまうものでしょうけど、ラインズのブロッキングの反則は、スタートの反則
とパスプロ時のホールディング2回のみだったように思います。
ボ 強力立命DLと対戦してのこの結果は、攻撃ラインが、いかに健闘したかを示しているのではないかな。試合序盤でのオープンプレーはラ
ンナーの切れ上がるタイミングが悪いシーンが見られたが、ブロッキングには成功しているのは確認できていた。
ド インサイドレシーバのブロックが予想より長時間もっていたしプルしたOLもナイスなタイミングで入り込めてました。
ド これでオープンでの勝負は目処がついたと思うな。少なくとも切り崩す糸口はつかめる と。
ド 私も「勝負できるっ」て思いました。
ボ さらに攻撃面でブロッキングが通用するという確信を持てたのは1Qの#6の中央突破だな。
ド 普通にやっても思いのほか出せる。そんな印象を持ったです。
ボ ちなみに4Q最後のKGのTDドライブでも同じプレーをしており、やはり大きなランニングホールが開いた。
ド もーOLは立派でしたよ。で、この試合、陰のヒーローを挙げるとしたら宰相は大林を挙げさせて頂きます。この試合の彼の仕事振りは見
事の一言です。スナップが全く乱れることなく河野の胸元に納まっていきましたから。
ボ これをノーハドルから1試合やれるんだから、感服しますわ。
「お家芸のブラッシュアップ」
ド で、そのKG攻撃のプレー群なんですが、
ボ ふむ。
ド 要所でのスローバックパターンはもう20年近く関学の勝負どころでのプレーとして定着してますが、この試合では更にもう一ひねり加え、
ロールアウトした上でヒッチ気味にスローバックするというパターンを導入しましたな。
ボ 「ランではカウンター。パスではスローバック。」コレよコレ。まず、この試合で軸になるゲインを生んだのは再三繰り出されたQBのカッ
トバックプレーだ。
ド QBが3歩外へスプリントし守備フロントの反応を誘い、内に切れこむ。戻ってくる守備をブロックし一気に切れ上がる。これが最後まで
止まらなかったですね。
ボ QBのムーブメントの逆を突くプレーだ。また要所でキーゲインとなったパスプレーもやはり逆を突くプレーだよ。さっき宰相の言ったプ
レーはスピードスイープのFLとセットバックRBを用いたクロスバックをフェイクし3歩スプリントしてのスローバックだ。
ド 2バックSGからの2RBによるクロスバックフェイクのパスは神戸戦であっさりQBサックにあってます。なもんでより守備をストレッ
チする方策としての別のクロスバックのバリエーションなんですよね。
ボ そそそ。で、QBに投げさせる時間を稼ぐことが出来、且つターゲットをフリーにしやすくする為に、そこからスプリントさせてのスロー
バックとした。
ド うーむ、念入り。しかも完璧でしたな。
ボ このプレーは3回企画され2回成功している(いずれもターゲットは多田。1回は#1がターゲットとなったがカバーされており投げ捨て
となった)。2回ともロングゲインとなってるね。
ド 大王様、予想と全然違うじゃないですか(笑)。
ボ .....ちなみに2バックSGからの2RBによるクロスバックは使用され続けているよ。これはクロスバックフェイクのQBゴーも含
めて地味ながらゲインを重ねている。デコイで飛び込むRB2枚に対応している間にQBが勝手に走るプレーだ。これも見逃せないよ。
ド つまりランに関してはQBロールとQBカットバックがシークエンスの根幹にはなりますが、実際はそこからブワーッと広がるわけですな。
ボ こんな感じかな。
・1バックSGスピードスイープとスピードスイープフェイクのRB中央のクロスバック。
・1バックSG上記をフェイクしたQBのロールパス
・1バックSGからFLフライモーションのロールオプション。
・2バックSGからクロスバック
・2バックSG上記をフェイクしたQB中央
・2バックSGからFLフライモーション。QB、FLのオプションのアフターフェイクを入れたRB中央。
という組み立てになり、決め撃ちQBリードドローと早めのスクランブルがこれに加わる。モーションバックがそのままQBの前を走るか
後ろに回るかは途中まで同じ動きなので直前まで分からない。2バックからは誰がどこに飛び込んでくるか分からず、QBに反応すると中
央を出される。
ド なるほど。で、ロールするQBに反応するとブロックの餌食になりカットバックで出される上、スローバックまで投げてくる。
ボ まさに蟻地獄。もちろん前出のOLの奮戦が根底にあるのは間違いないんだけどね。ちなみにTVで解説者が的確に述べていたよ。QBが
オープンにロールを開始する。守備の動きをみてGOできるならそのまま走りきる。ディフェンダが流れてくる場合、カットを踏んで内に
切れ込む。ダウンフィールドが見やすいSGならではである。この動きにオプション、カウンターを混ぜていく。実は極めてシンプルなプ
レー群なのである とね。
ド 河野はパッサーとしてはまだ発展途上ではありますが、チーム随一のスピードとカットバック能力がありますから。状況を見てのラン・パ
スオプションや、ターゲットをチョイスしてのパスを決める難しさと比較すると、このカットバック折込プレーはQBにとって、こなしや
すいオプションだったろうと思います。
ボ だな。
ド で、大王様、予想とかなり違いま....。
ボ あーそーだよ!もー痛恨の思いだよ!。
ド QBのランが主体になるのは予想していたんですけどね。
ボ そ。プレー毎にQBをスイッチし走りつづけるのも予想していたんだけどね。しかしイメージできたのは中央へのランプレーが主体で、こ
こまでのバリエーションは想像できなかったんだよなぁ。
ド もう少し考えれば幾つかは予想できたと思うンデスが。
ボ そーなんだよ。例えばQBのランをベースとしたプレーシークエンスといえば88年のKGがまさにそうだった。QBのロールのランパス、
スプリントからスローバックパス、QB=>TEリバース....。これが分かっていたのだから、少なくともFLのスピードスイープ(
デラウェア・スイープ:SGではOLとQBの間をLOSと並行にモーションしQBからハンドオフをうける)をフェイクしたキーパーや、
エンドゾーンまで1Yまで迫った#81へのスローバックなどは読みきらなければならなかったよな。
ド 実際、2バックSGからのQBロールは88年の埜下(はからずも同じ#14)のロールと姿がダブりました。
ボ さらに痛恨なのはFLのモーション=スピードスイープではないのだ。フライモーションをしたっていいのであったよ。あー悔しい。
ド 2バックSGからFLがフライモーションしての展開は、これはもう97年立命戦以降の定番パッケージと同じですし、クリスクロス(ク
ロスバック)は99年にTから繰り出したもの。4Qに見せたロールオプションは有馬−三井で見せたものでしょ。
ボ これまでに見せてきたプレーをSGから展開してみたら?という発想が欠落していたのだよ。
ド 原因は明確です。
ボ は?
ド これまで長くKGの攻撃を見てきて、印象に残るプレーは自分なりに把握してきたつもりですが...。主としてセットバックのものが多
かったせいもあるでしょうが、どうしてもセットバックからのバリエーションしかイメージできないでいないのですよ、我々は。
ボ なるほど。
ド そして根底にあるのは個人的にはSGがあまり好きではないからではないかと(笑)。
ボ 明快だ。
ド さて、言い訳はともかく一方のパスアタックに関してはQBとともにレシーバを評価したいですな。
ボ ロングポストで抜けた#9、要所でスローバックを捕球した#81もさることながら、#84の活躍はすばらしかった。
ド 確かにキャッチ後のファンブルロストはいただけなかったですが、ボールに対する執着とゲインに対する執念はすばらしい。下級生の頃か
らキャッチングに関してはチームで最も安定していると見ていたのですが、タックルを振りほどいてのダウン更新、スピードスイープでの
キャリー、オープンでの強引なブロック、そして身長差を跳ね除けてキャッチしEZにねじ込んだTDパス捕球。
ボ どれも満点である。ちなみに「カバー云々ではなく人数を寄せる方針」で守る立命守備は昨年とは変わっていなかったな。
ド 結果、少ないサイドは完全なマンカバーとなってました。そこにイン、スラント、フックを投げ込んで稼いでます。
ボ 独特のパスルートの組み合わせで第一ターゲットを無理やりフリーにするパス(後半の#1へのパスなど)を除いては、多いサイドにはま
ったくといって良いほど投げなかったね。もう決めうちであるよ。
「引くな!攻めろ!」
ボ さてKG守備は概ね予想通りの出来であったと言っていいかな。
ド 予想と異なったのは一発TDを2発も喫したことですかね。総失点も予想の範囲内であったのですが、ここまで短時間でとられるとは考え
ていなかったです。
ボ RB陣のランはよく抑えたと思うが、QBのランになんだかんだと進まれたし、#7のランアフターキャッチにもかなり梃子摺った。
ド やっぱり抑えきれなかったですね。この攻撃は。
ボ CBの先発に#19がスタートで入るのは予想の範囲だったが、それでもパス守備は強化されなかったなぁ。
ド んー進まれるのはいいんですが、気に入らなかったのが、最後の立命のFGトライへのドライブの際の引き気味の守備ですけどね。
ボ うーん、もうすこしQBにラッシュして欲しかったなぁ。
ド 池野を一回でもタックルすれば一気に状況が変わりますよ。
ボ WRが走ってる分、戻ってスパイクするまでかなり時間を使うでしょ。場合によってはTOも消費させられるしね。
ド そもそもエンドゾーンを守ってもしょうがない訳でしょ。30Yの内側に入られたら終わりですよ。もうちょっと攻めて欲しかったですね。
ボ 立命のTDのうち2TDがロングパスによる一発だったのが効いてるんじゃないかなぁ。
「それでもやはり『さすがは立命館』」
ド そうなんですよね。まーここまで試合を振り返って考えてみると、如何にKGがこの試合に準備し、そして遂行したかがよく分かる訳です
が。
ボ 内容的には完勝だった。
ド ですがね、先ほどの2本のTDパスに象徴されるように、結果的にはまさかの逆転負けすら覚悟しなければならないほど、KGは追い詰め
られたのも事実なんですよね。
ボ 確かにKGにミスはあった。しかし、ミスは立命館にも発生している。いや、むしろ致命度の高さでは立命館のほうが致命的なミスだった(
パントキャッチのミスとか)。
ド KGがここまで追い込まれたのはやはり立命館の選手個々の持っている能力の高さによるものですよ。
ボ 試合は敗れたが、どちらが強いかという議論は不要だろう。勝負に向けての準備は行われていたよ。例えば立命攻撃では、ロングパスの精
度に不安の残るパスオフェンスをカバーすべく、準備したHBパス。ノーマークだった快速1年生WRのストリークは、パス守備に問題を
残すKG守備に対して正しい選択だったと思うよ。
ド 速かったっすねぇ、あの1年生。
ボ それと立命はKG戦の為のノーハドル対策を準備していたのを確認できたよ。KGはノーハドルといってもリストバンドを用いた方式を利
用していた訳だが。
ド 全プレーノーハドルを行う以上、当然といえば当然ですよ。もちろん選手交代も消耗を回避するため頻繁におこないます。
ボ すると当然、次のプレーまである程度の時間は発生する。それでも守備にとって残念ながら守備ハドルは組むことはできないしシビアな勝
負で頻繁にTOを取る訳にはいかない。そこで行ったのがサイドラインからのブロックサインの指示だ。立命守備はKG選手が交代する間、
全員がサイドラインを向いていたよ。
ド ただしそれでも守備ハドルを組んだ場合と比較して意思疎通、細かい指示の確認には行き渡らなかったろうと思うのです。特に選手自身が
当たった際に感触、印象をベンチに伝えたり、フィールドで共有することが難しかったろうと。
ボ まあ限界はあるわな。それにある程度の選手交代は行っていたものの、最終的に守備選手の消耗は回避できなかったと思うけどね。対策とし
てはこれ以上のものを求めるのは不可能であろう。ただ無策で終わった訳ではない事は書いておきたいね。
「スペシャルシステムの関学」vs「スペシャルプレーの立命館」
ボ 立命にとって不幸だったのは作戦にしてもミスにしても、なんとも噛み合わせが悪かったということだな。めぐり合わせが悪すぎた。結果
的にはミスなのだろうが、そう言い切ってしまうには気の毒な要素がいくつかあったよ。
ド 少なくともフィールドの選手はベストを尽くしたといえますよね。
ボ そうだねぇ。試合後のHCの談話で「若さが出た」というのがあったが、これは選手に対してのものではなく、コーチも含めた首脳陣の自
戒の言葉でもあるのだと思うんだけど。
ド 信用するしないという言葉は使いたく無いのですが、これまで築いてきたものを信用しきれたのかどうかという点が気になりますね。
ボ 先発は池野ではなく木下。築き上げたコンビネーションを選択せず、スペシャルプレーのサプライズを信じたと。実際の効果の差はともか
く、少なくとも「そうしなければ勝てない」と感じたのだろうね。首脳陣は。
ド 戦力の差を大きく感じてしまったのでしょうか。ううむ、ちょっと酷な表現かもしれませんが。池野に戻してから攻撃に勢いが戻ってきた
じゃないですか。なんか、こう、作戦のミスを選手が全力で取り返しに行っているように見えましてねぇ。
ボ むう。そうだなぁ。
ド 関学のオフェンスはこれまでのリーグ戦とは全く違う組立をしてきました。プレー自体は他の試合でも使われたものもあったが、プレーの
組み立てにより効果を倍増させたといっていいでしょう。
ボ 一方の立命は散発のスペシャルプレーで終わってしまった感は否めなかった。
ド 結果的にQB池野の指揮のもと、これまでの試合通りの攻撃をした方が効果的だったでしょ。この辺もうすこし掘り下げたいですな。
ボ ふむ。
ド いや、確かにサプライズは必要だったかもしれないけど、散発のプレーで終わらせずに、シリーズとして、攻撃パッケージとして広がりを
持たせられなかったかなと思うんですよ。たとえば#21からのHBパスですな。あれがTDプレーになったのであれば、以後のシリーズ
でHBが同じ動きから走るプレーを入れるとかですね。
ボ なるほどね。プレーバリエーションとして以後の広がりを持たせたプレー群にまで発展しきっていないと。
ド それをムダ無く、ぶっつけ本番でしかもノーハドルでやったのがKGで、まったくブツ切りに、連続性を持たせきれていないのが立命だと
思えるのですが。
ボ そうだな。俺としては「大一番を前に準備は必要だった。確かに準備はした。しかし、効果的な準備ばかりであったろうか?」というのは
疑問として残るかな。QB木下の起用を1年前から考えていたそうだが、1年間の間に疑問に思うことは無かったのだろうか。
ド 準備をすることが目的となって居なかったろうか?ということですか?
ボ そう。そもそも立命は初優勝する前から、現在に至るまで「ここ一番の試合で特別に準備したプレー群をもって劣勢を跳ね返し勝利した試
合」は殆ど無いでしょ。
ド 唯一の例が98年の京大戦かと。
ボ でしょ。このチームはそういうチームでは無い。いつも通りのプレーでいつも通りに戦った方が強さが出るチームなのだよ。奇策で跳ね返
すのではなく、「奇策で勢いを増す」チームカラーなのは過去10年ほど振り返れば明確だよ。すくなくとも今年まではそうだったといえ
る。でもこれからもそれで良いかというと違うだろうね。プレーバリエーションとして以後の広がりを持たせたプレー群にまで発展させら
れれば立命はもっと強くなれると思う。
ド 一方のKGは日大に圧倒され続けた時代から関京時代を経て現在に至るまで、大一番では準備に準備を重ねてなんとかして勝利をめざす事
がDNAとして刷り込まれてますもんね。
ボ 新戦術をKG流にアレンジしてしまうズルさは大昔から現在にいたるまで行われている。試合翌日の新聞でコーチが「(SGに取り組むに
は)これまで築いてきたものを捨てる必要があった」というニュアンスの事を言われていた。さらにOBからはSGの採用自体に難色を示
すものもいたということなのだが。
ド ふむ。
ボ 冗談ではないよ。何も捨ててはいない。それどころか新たなものを手にしたではないか。それに古いOBの方にお聞きしたい。「かつて、
どうしても止められなかった立教のTフォーメーションに対して、どのようにして対応されたのですか?」「シングルウイングを捨ててK
G攻撃は何を採用されたのですか?]とね。
ド うむ厳しいご指摘。「伝統」という言葉は響きが良いし、一見分かりやすそうで、それでいて耳にした人間を思考停止に陥れるので、でき
るだけ使いたくないのですが、これこそがKGの持つ伝統の力なのではないかと。
ボ 結果的に又、プレーブックが分厚くなったなぁ。平成ボウルで来日した外国人コーチが「SF・49ersより分厚い」といっていたのだ
が。
「KGエイトマン」
ド 試合開始前、我々最大の不安は「今日の河野は果たしていい河野なのか、駄目な河野なのか、河野のパフォーマンスは立命館に通用するの
か」でしたな。
ボ そうだね。神戸戦が良かったんで大丈夫かなと思ったけど、直前の龍谷戦が良くなかったし。心配だったよ。
ド しかし、試合が始まり、序盤を経過するに従って我々の意識の中で「河野なら大丈夫、河野でいける」に変っていきましたよ。
ボ この試合ほど#14の姿を頼もしく感じたことは無いねぇ。河野のキープを見ていて前半は「今のはよく走った」「よく切り抜けた」とい
う感想をもったのだが。
ド それは後半には「よし。河野がプレーしていればなんとかなる」というものに変わり倒れても倒れても立ち上がり、ボロボロになりながら
全力で走りつづける、その姿を見て最後には「もう十分だ。もう走らなくていい。」という気持ちに変わりましたよ。泣けますなぁ。
ボ 自らの体を文字通り「弾丸」と化し何度も何度も立命守備の壁にぶち当たり続けたQB#14。彼のこの姿こそが、この試合におけるKG
ショットガン、KGオフェンスの姿勢を具現したものだったろうね。
ド まさに「弾丸QB」であった、と。KGショットガンの弾丸QBですよ。
ボ パッサーではなくランナーとしての評価が高かったQB#14。慣れ親しんだIフォーメーションから急遽SGにとりくんだQB#14。
その1年目に優勝をのがしてしまったQB#14。でもね、これは河野の事だけを示した訳ではないんだよ。
ド 悲運のQBといわれた小野コーチの現役時でありますな。彼の現役時代のナンバーも奇しくも#14でありました。
ボ 歴史は繰り返す。何度でも繰り返す。形を変えて繰り返し続けるのであるよ。
ド ナイスゲームでしたなぁ。これで河野もやっとエースになりましたな。
ボ お前、最後号泣してたジャン(笑)。
ド えー泣きましたよ、泣いちゃあいけませんか!(怒)。
ボ 泣くのはいいが、今季のこの欠席数の多さ、なんとかならのんかね!。
ド おっと、もう職場へ戻らなければ〜♪。
ボ まったく。
以上

