王国王宮


学生フットボール界における漠然とした不安


憂に終わればいいのだが。                   
辛い話はしたくないが、めったにやらない放談という事でお許しを。 


***

1998年の甲子園BOWL後の法政の監督のコメントは印象に残る。

「どうして勝てないのか教えてほしい」。             

こっちが「何を考えているのか教えてほしい」ぐらいだ。      
胸に手を当ててよく思い出せば何か分かるんじゃないかなあ。    
ここ数年の話じゃなくて過去50年の間の話だ。          

***

甲子園BOWL99はKGの大勝で終わった。本来ならば....  

ボ 「いやあ、大勝、大勝(笑)。」               

ド 「御意。..さすれば、このまま米丼も頂戴したいかと(笑)。」

ボ 「そちの大食いにはあきれるわい(笑)。」          

ド 「はっ。宰相の胃袋は、これこの通り底無しでございますゆえ。」

ボ 「ハッハッハッハッハッハッ(笑)」             

ド 「ハッハッハッハッハッハッ(笑)」             

で終わるところなのだが.....。               
実のところ非常に「気分が悪い」。「漠然とした不安」のせいで。  

***

まず、断っておきたいのは、選手やコーチの頑張りを否定するつもりは
一切無い。彼らが多くの事を犠牲にして頑張ってきたのは事実。この努
力を否定できるほど大王は偉くもなんとも無い。「頑張ったという事実
」「努力したという事実」は否定する気はサラサラ無い。      

次に、関東のチームに対するコメントについてだ。         
近年、特に春は可能な限り関東のチームを見るように努めてはいる。こ
の春も大王、宰相合わせると日大2試合、法政2試合、慶応、早稲田、
帝京、専修、明治、桜美林、関東学院は1試合ずつ見ているが、どうも
掴みきれない。秋は宰相が関東決勝を見てきてくれた。これらの試合は
ビデオ撮影も行なって何回かは見直しているのだが、いまだ各チームの
色がよく分からない。少なくとも「大王の漠然とした不安」を払拭する
だけの材料が揃わないというのが実際のところだ。         

なもので、ここ数年でもっとも見ている、もしくは理解しているつもり
の法政に絞ってコメントしたい。DIV.の代表というのはそういう目
で見られる事もあるという事でで許して欲しい。もし、「法政」と「法
政以外のチーム」は全く違いますよ。大王が言うような事は他のチーム
には当てはまりませんよ、というのであれば、大王の不安は、もしくは
この文書自体が杞憂だったという事だ。その時は謝ります。自分の不安
が余計な心配だったという事だから、喜んで謝りますよ。      

最後は書く理由だ。                       

本来王国の基本方針は「自分の目で見た事以外は書くな」だ。GUES
Sで書くと自ずとGUESSがGUESSを呼び大間違いな話になる。
事情を知らない人が見たらそれが真実だと思ってしまいかねない。また
(GUESSで書くほどだから)真偽の程を確かめる手だてもない場合
が多い。かくして「間違いの可能性を秘めた都合のいい想像」が「まぎ
れもない事実」として流布されてしまう。これは迷惑な話だ。これは避
けたい。だからGUESSでは書かないようにしている。      

じゃあ、それなのに、そこまでリスクを負って、どうして(王国として
は掟破りな)まともに見た事の無いエリアの話を書くのか?     

一つは「一度聞いてみたかった、確認したかった事」だからだ。   

今の我々には残念ながら確認する事が出来ない事だし、今後もその機会
はそうそう無いだろう。だから聞いてみたい。聞いてみるしか無いから
だ。残念ながら関東の試合を扱ったHPは少ないし、「なぜ関東は甲子
園で勝てないのか」について、まともにコメントされている事が少ない
からだ。それに少なくとも問いかけぐらい自分の言葉で投げかけないと
いけないと思ったし。                      

あと、もう一つは大王自身が「いいかげん辛抱できない」状態になった
からだ。フットボールの将来についての「漠然とした不安」に我慢でき
なくなったからだ。                       

以下「そりゃ違うぜ大王さん(笑)」「心配しなくても大丈夫」と言わ
れるのを覚悟且つ期待して大王の私見を述べる。          

***

大学フットボールは関西と関東でかなり性質の異なるものになってしま
ったように思う。何と言うか受ける印象の違いを羅列すると....。

緻密      VS アバウト                 
戦略重視    VS 無手勝流                 
複雑      VS 単純                   
集団戦     VS 個人技                  
多彩      VS 単調                   
相手に合わせる VS 自分のスタイルを貫く           

などなど。かなり違うものになっているように思える。       

そもそも、この競技の特徴は多くの側面を持つことである。     
かつて武田先生が著書の中に、「バスケットより広いフィールドでパス
を投げ、ゾーンもマンツーマンもある。サッカーより長い距離のボール
を蹴る。ラグビーのサインプレーが複雑だというがそれよりも複雑なボ
ールの展開をし、RBのステップワークはスキーのスラロームに似て.
..」という風なくだりがあった思う。              

「投げて、走って、捕って、蹴って、当たって、....。これほど面
白い競技は無い。」まったくその通りだ。             

そして大王はこの競技の最大の魅力はその戦略性だと思っている。  
もっと言うと、他のスポーツとの差を比較したときに、最も魅力として
前面に出てくるべき部分がそうだと思う。             

あるマイナーな競技を本当に普及させるのであれば、その競技の魅力を
余すところ無く消化し、教え、伝え、そして試合で見せなければならな
いだろう。競技する者が増え、競技を教える者が増え、競技を見る者が
増え、競技を支援する者が増え....という循環を回すには、これは
必須条件だ。これが正しい取り組みだと思うし、そこで見られるフット
ボールはきっと「正しいフットボール」だと思う。         

では現在それが出来ているのか?                 

多くの側面を持つこの競技だが、自らがそのうちのいくつかを捨て去っ
たかのような取り組みをしているようなチームが存在する気がするのだ
がいかがか?。                         

そう、まるで違う教科書で学んだかのごときスタイルの違いを感じる時
がある。そして、今思うに、(いかに考えても)、その教科書を読み間
違えているのは東に多いのではないか?。もしくは東では「戦略性」「
システム」というキーワードが欠落している教科書を読んでいるのでは
ないか?と思える事があるのだ。                 

***

さっそく槍玉に上がって申し訳ないが、法政だ。          

学生主体は結構だが、意味を履き違えてもらっては困る。      
「学生主体」という言葉は「組織立った取り組み」の反対語ではない。

学生以外のコーチが沢山つくのは恥ずかしい事と思っているのだろうか
?まさかスカウティングが卑怯な行為だと思ってはいないだろうが。 
いずれも許された正当な手段なはずだ。でなければ法政自身もスポッタ
ーを置かないだろう。対戦チームの試合をビデオで撮りに行ったりしな
いだろう。すでに取り組んでいる事じゃないのか。そこが弱点だという
のであれば、それは単に取り組みが不足なだけじゃないか。     

「学生主体なので限界があります。」               

?そうかい?より深く取り組む為に何か手だてがあるんじゃないの?何
かいい訳に聞こえるのだがどうだ。                

それから「学校の支援が不足している」というのもどうかな。大体推薦
で何人入部させているのだろう。推薦をうけている段階で学校の支援を
受けている事にはならないのかな?                

京大を見てごらんよ。                      
神戸はどうだろう。                       
東大でも構わんよ。                       

どう考えても学校は支援していないよ。神戸なんか学生コーチが大半。
ヘッドコーチが仕事でリーグ戦の指揮をとれないようなチームだ。どう
贔屓目に見ても自分たちよりも置かれている環境は厳しいはずだ。金の
かかるスポーツだ。篠竹監督じゃないが、学校から入る活動費なんか「
ラインをひく粉代にもならない」。でもこれはどこのチームも同じだ。

でも彼らは強いぞ。                       
かなり強いぞ。                         
これをどう説明するのだろう?                  

これらのチームはビックリするようなアスリートがジャンジャン入部す
るチームだろうか?選手層は厚いか?個々の対決ならまず負けないよう
な相手じゃないか。なんで彼らは強いのか?。           

クラブハウスがある?コーチが沢山いる?そんなもの一朝一夕に今の形
になったのでは無い。時間をかけて仕組みを作ったからだ。ひたすら実
績を積み重ねたからだ。それが評価されたからだ。だからハードウエア
を寄付された。だから留年してまでコーチをする奴が出てきた。だから
自ら進んで浪人してまで入部してくる奴が出てきた。        

全てスタートは自分たちの努力だ。学校の支援じゃない。もっと言うと
努力によって支援を勝ち取ったとうのが正しい。これに対して言い方は
悪いが、これじゃ東のチームは「アスリートの持ち腐れ」だよ。   

京大を前にして、                        

「学生主体の限界..」                     
「学校の支援が受けられないから..」と堂々と言えるのだろうか? 

同じ事はできないか?なら立命館はどうだ。            

同じように多くのアスリートをかき集めてきている。しかし、それだけ
のチームじゃない。実績を作り、学校に働きかけて支援を求めた。それ
が認められた。認められるまで努力した。彼らだってあれこれ模索した
結果自分達にとってベストの形を見出し結果を出しているじゃないか。

なぜ同じ事ができないのか?                   

まわりの環境が悪いのか?選手やコーチが取り組もうとしても、それを
阻むものがあるのか?                      

競技自体の認知度が低い、他のスポーツとの競争が激しい、OBの頭が
固い、妙な伝統が残っている、学校が相手にしない...学校によって
色々障壁は有るだろうね。確かに。                

そうか、それは気の毒だ。                    

しかし恨むなら自分たちの先達を恨め。少なくとも他所の人間を恨むの
は筋違いだ。文句を言うならOBに言うべきだ。戦後50年の間の全て
のOBに文句を言うべきだ。                   

面白い試合をしてきたか?                    
これがフットボールだという取り組みをしてきたか?        
フットボールの魅力をすべてみせつけるような試合をしきたか?   
OBが戻ってこれる、戻りたくなるチームか?           
勝つだけでなく、この競技の将来を考えて努力してきたか?     
将来の普及や振興を少しでも意識して取り組んだか?        
少しでも競技レベルを高めようと研究したか?           
誇れる実績を作ったか?支援を要求すべく学校に談判にいったか?  

そしてそういうチームであり続けようと努力したか?        

これまでの結果が答えだ。                    

はっきり言う。確かに現役の選手達の責任は薄いだろう。自分がそこ加
わった段階ですでに「今の状態」になっていた訳だから。しかし、多少
気の毒だが、.....                     

これは「自業自得」だと言ってもいいのではないか。        

なぜなら、OBに噛み付いても何も変わらない。自分達から変えはじめ
ないと変わらない事だからだ。変えられるのは当事者である現役の人た
ちだけだかなのだから。                     

***

一体何が目的なのか?                      
勝利が目的ではないのか?                    

「選手やコーチは一生懸命やっている」              
「色々な事を犠牲にしてやっている」               
「頑張っているのだから文句を言うな」              

そんな事は容易に想像がつく。私生活もきっと犠牲にしているだろう。
実際凄まじいまでの努力をしているだろう。でなければ、あれほどまで
の強さは無い。                         

逆に聞きたい。                         

だったらどうしてそこまで一生懸命やるのか?           
何で他の事を犠牲にしてまでやるのか?              

勝ちたいからじゃないのか?                   
好きなフットボールで勝ちたいからじゃないのか?         
だったら勝たなきゃ。                      
負けたらダメじゃん。                      
勝つまでやらなきゃ。                      
その為に、勝つ為にベストを尽くすべきだ。            

どうせしんどい思いをするのなら、より勝ちに繋がるしんどさを選ぶべ
きじゃないのか?努力が報われないのは努力が足りないとか、根性が無
いからではなくて、努力の方向が違うという事だってあるぞ。今のやり
方で勝てないのなら、そのやり方を変えないと。何かが変わらないと何
も変わらない。                         

そして変えられるのは自分達だけだ。               

6年も続くと「今年はタマタマ弱かった」では済まされないよ。   
確かに甲子園BOWLにおける遠征は不利な面があるだろう。しかし大
昔ならいざしらず、日帰り出張できるような時代だ。そんなに不利だろ
うか?応援にしても試合をどこかでやらなければならない以上どちらか
の応援が多くなるのはやむをえない。それ以前に応援だけで勝てるなら
阪神タイガースは毎年優勝しているよ。(もっと言うと仮に東西学生王
座決定戦を東でやっても東の代表チームのサイドに座る人間が多いとは
とても思えない。ヨコハマBOWLや一連の川崎シリーズの客の入りを
見れば一目瞭然だ。)                      
今まで通りのスタイルで甲子園で勝てればそれは理想的な事だと思うし
快挙だと思う。しかし、もう待てない。それよりまず勝つ事の方が大事
なんじゃないだろうか。                     

何をすべきか答えは出ている。                  

ただし答えは出ているだけに何をしなければいけないかも明確だろう。
まずスタートする事が大事なのではないか。            

***

さて、具体的に述べるとすれば、現時点では            
1.守備システムの整備                     
2.キッキングの重視                      
という順番で強化するべきなのだろうが、ここではもっと根本的な話し
をしたい。                           

1.「真の伝統」を守るには                   

関東のフットボール事情から想像するに.....         
己のスタイルに拘るのは結構な事だしある程度は必要だ。ノウハウの蓄
積を考えるとあるレベルまで極める必要があるからね。しかしこだわり
と必要以上の固執は違うと思う。                 

「これが伝統だ。だからこれでいいんだ。文句を言うな。」     

そうか。伝統かあ。                       

じゃあチームが創部されたときからそうなのかい。たとえば法政におい
てオプション攻撃が看板になったのは90年代に入ってからじゃなかっ
たっけ?。                           

では当時の選手は伝統にそむいてオプションに取り組んだわけだな。そ
してそのおかげで今の地位があるという事になるぞ。        

ズルくないか?その考え。                    

当時の選手やコーチが、オプションに取り組んだ時どれだけ苦労したか
もちろん知っているよね。ものすごいエネルギーを費やした。そして勇
気ある決断だったと思う。想像するに、チームの内部でも反対はあった
だろう。もちろんOBだって五月蝿かった事と思う。        

「どうやって修得するんだ。本当にマスターできるのか。」     

といった不安もあったろう。ではどうして彼らはそうする事を選んだん
だろうか?。                          

「今、これをやるしかない」と思ったからだろう。         
「勝つにはこれしかない」と気が付いたからだろう。        

そして物凄い危機感をもっていたからだろう。           

彼らは後輩に楽をさせるために頑張ったんじゃない。自分達が勝ちたい
から頑張った。言い方は悪いが今は遺産を食い潰しているだけのように
みえるのだが。                         

それが伝統か。伝統を言い訳にして挑戦することから逃げているだけじ
ゃないのか。過去に一度は壁を乗り越えた事のあるチームだ。しかもそ
んな遠い昔ではない。同じように超えて行く事はできないのだろうか。

当時のOBは今の姿を見てなんと言うだろうか。          

「今のスタイルのまま絶対に変えてくれるな」           

というだろうか。たぶん言わないだろう。そりゃ自分達が基盤を作った
物だから、その愛着からそう言う事も有るだろう。彼らの気持ちは分か
る。しかし、最後には逆にこう言われるかもしれない。       

「なぜ俺達のように挑戦しない?」                

関東で日大に勝つには得点力のあるオプションが結果として一つの回答
だった。次に関西に勝つには何が必要なのか。それは何だ。その違いだ
けじゃないか。                         

「なにをためらう必要があるのか。」               

そう言うんじゃないだろうか。                  

自由奔放とはチームとして過去のしがらみにとらわれる事なく、自分達
の取り組みたい事を遠慮なく実践し、またその実践を支える仕組みを持
つ事じゃないのか。自由な発想から現状を打開する新しいモノを生み出
す。そういうチームで有り続ける事。               

それこそが本当の伝統じゃないのだろうか。            


2.汝の好敵手を愛せ                      

法政は学生ナンバーワンのアスリート集団だ。コンスタントに優秀な人
材があつまってくる。今までと同じ事をしていれば、いつも通り、まあ
関東での優勝は堅いだろう。しかしそこから先もいつも通りだ。   

孤高の存在というのは辛い。                   

かつてのKGや日大がそうだったが、ともすれば陥りそうな罠や誘惑と
戦い、勝利しなければならないからだ。姿かたちのある相手に勝つので
はなく、実体の無い自分と戦い、勝つのは大変な事だ。ある意味、それ
だけで疲れきってしまい、新たな取り組みに挑戦する力が残らないのか
もしれない。                          

それに、そこそこやっていれば、それなりの結果を残す事ができる位置
にいるのだから、なんとなく満足してしまうのかもしれない。大王がそ
れでも日大には敬意をはらってしまうのは、その辛さや恐さをよく知っ
ていて、それに打ち勝たんと取り組む姿勢を感じるからだ。またKGフ
ァンとして誇れる部分の一つに、驚くほど長い間その戦いを続け勝利し
てきたという事実がある。                    

真の強豪となるには、こういった要素が必要なのだろう。しかし彼らだ
って常に勝者だったわけでは無い。負ける事も多々有った。そんな時、
彼らを救ったのは何か。チームへのプライド、愛情そしてライバルの存
在だ。有る種関西で安穏としていたKGが飛躍を迎えるきっかけとなっ
たのは、ライバル京大の登場に他ならない。かたや今の関東ではライバ
ルリーが育ちにくい。原因ははっきりしている。リーグ戦終了後のブロ
ック間シャッフルが原因だ。最終的には強いチームが勝つのだし、シャ
ッフルがあろうとなかろうと結果は変わらない。逆に、シャッフル自体
のデメリットの方が大きい。勝ち続ければ当たるかもしれないが、相手
が同様にプレーオフまで勝ち上がって来なければ実現しない。「当たる
かどうかわからない」相手よりも「イヤでも当たる」同ブロックの相手
の方がライバルリーは生まれやすい。しかしその相手が毎年コロコロ変
わる現在の状況は「ライバルリーの醸成」という意味では恵まれている
とは思えない。2ブロック制を廃止して1ブロックにしろとは言わない
し、DIV.1のチーム数を減らせとも言わない。シャッフルだけはや
めてくれ。それだけでかなりの効果があるはずだ。         

これは法政云々ではなく(個々のチームの責任というよりは),東のチ
ームみんなが、一度協会に訴えてみて欲しい事だ。         
逆に協会に聞きいてみたい。「あのシャッフルのメリットは何ですか?
」「やめられない理由は何ですか?」と。色々なスポーツの発展の歴史
を見た時に、ライバルリーの存在を否定する事はできない。西でそうだ
から東でも同じ事をすればという単純な発想でもあるが、逆にこれを否
定する材料があるのだろうか?                  

***

さて、どうしてこんな「うっとおしい」事を言うのか?       

「将来への漠然とした不安」が有るからだ。つまり         

関東のフットボールが強くならなければ,日本フットボール界の明日は
極めて暗い。                          

という事だ。                          

かつてKGは関西で「孤高の存在」だった。もちろん当時からフィジカ
ルに優る日大、関東代表を倒すためにシステムの研鑚には余念が無かっ
たと思う。リーグ戦を戦う中で、最後には「甲子園で関東(日大)に勝
つには?」という「関東の影」がいつも存在していたはずだ。しかし「
孤高の存在」とはある種のいい訳に使われる事もあったのではないかと
思う。KGは甲子園で連覇もしたが大連敗もしているのだ。     
ちなみに大王は80年代に日大にボコボコにされるKGを見て、明らか
に力の差を感じた。持ち前のインチキでかろうじて試合の形ににはして
いたが個々の力量の差は明白。ただし同時に、KGにシステムの蓄積が
無ければ、あれらの試合はもっと酷い結果になっていたと思ったのも事
実。アスリートをもっと揃えれば、五分の展開に持ち込む事は出来るな
あ、と感じていた。                       

さて、しかし、その「言い訳」が通じない相手が出てきた。     

京大だ。                            

システムで対抗してきたこの相手に勝つために、自らのシステムを高め
ざるを得なくなってきた。素材に恵まれた年の京大は無敵で、ここにつ
いにシステム面でのライバルが生まれた。この関係のせいで関西のフッ
トボールはある方向に進み始めたといえるだろう。さらに90年代に入
ってフィジカルに圧倒的な強さを持つ立命館が現れた。こうなると関京
はうかうか出来なくなった。システムでカバー出来ないほどの力の差が
生まれてきたからだ。こうなってからの関西学生フットボールのレベル
は飛躍的に向上を始めた。さらに個々に不足しているものを補うべく動
き出した。KGは推薦を復活させフィジカルに対抗、立命館はシステム
の強化に外人コーチを招聘、京大もリクルーティング、コーチングの強
化策を始めた。                         

そして現在、残念ながらそこには「関東の影」は見えない。     
それどころでは無くなったのだ。                 

西のフットボールは、おそらくこのままある程度までは伸びるだろう。
西だけでこれだけ厳しいライバルリーの存在が有ればいやでもプレーの
レベルは高まらざるをえない。しかしここで長年のライバルである関東
代表が抜け落ちる事は決して西の為にはならない。関西がここまで伸び
たのも、関東という存在が有ったからに他ならない。互いに高め合い刺
激を与え合う存在を失う事は大きい。               

「いいじゃん、西だけで伸びていけば。」             

その通り。別に構わないといえば構わない。しかし、それは日本のフッ
トボール界にとってはマイナスだ。                

なぜか?どうしてこんなに東を気にするのか?           

東でメジャーにならなかったものが全国で普及した試しがあるか?  
聞いたこと無いな。                       

関西でいくら盛り上がっても、たかが知れている。所詮近畿圏は関東の
三分の一の存在でしかない。リーグ戦で4万人集めようが、新聞やTV
がこぞって取り上げようが、関西の中から出ないので有れば、そこまで
だ。しかし関東で同じように取り組み導き出す結果は、まず3倍のイン
パクトがあると思っていい。関西は所詮は地方の一リーグだ。それに、
過去50年の取り組みで東と西で大きな違いが生まれてしまっている。
それは個々のチームの力量だけでなく、マスコミ認知度、集客力、ファ
ン、などの周囲の環境にも違いを与えてしまっているのが現状だ。  

ようは東は責任重大なのだ。東で他のスポーツとの生存競争に勝ち、競
技レベルを高め、大勢のファンを作り出し、競技人口を増やし、認知度
を上げ、それ支援する存在を増やしていかなければ、日本のフットボー
ルは断じて普及しない。                     

その為にはもっと強くならなければならない。           
その為には「正しいフットボール」をしなければならない。     
普及については関西の3倍だから3倍のワークロードがかかるかもしれ
ない。でもそれは首都圏である宿命だよ。6年間我慢した。どこかが出
てくるだろう。どこかが取り組むだろう。だけど確認できなかった。お
まけに99年の甲子園があの内容。不安は頂点に達した。だから今、問
いたいのだ。                          

「正しいフットボールに取り組もうとしているチームはありませんか」
「このままの状態でフットボールの将来はどうなるんですか」    

***

前出のようにKGも過去に甲子園で大連敗をした。そこから這い上がる
のに膨大なワークローを必要とした。しかし、今と昔ではフットボール
をとりまく環境が違う。のべ競技経験者は増えているはず。インフラだ
って良くなっただろう。昔は海外に行って勉強しなければ最新の情報は
得られなかったが今は違うだろう。海外の学校とほとんどの学校が提携
や留学したりしている。チャネルはあるはずだ。本だって取り寄せれば
いい。なんならe−MAILで情報をやりとりしてもいい。大体NFL
をTVで見ることの出来る時代だ。勉強する環境としては明らかに向上
していないか?たしかに競技レベルも高くなっているが、努力の結果を
導き出す事を考えれば過去に比べて格段に環境が良くなっているとも言
えないか?                           

それに普及を考えれば、今のフットボール界では大学の背負う責務は大
きい。プロが存在すれば最高峰のプレーは(変な表現だが)プロに任せ
ておけばいいのかもしれない。しかしプロの存在しないフットボールの
場合、学生フットボールが競技のレベルを自ら高めていかなければなら
ない。いわばフラッグシップな訳だ。そういった面でも関東、関西の責
任は重い。Xリーグの存在自体が安定感を欠く現在、まだまだ学生フッ
トボールの負うべき責任は大きいのだ。              

西は贔屓目も入れて結構頑張っている。              
東は今こそ見直す時期じゃないのか?               
いくらでも取り戻せる。逆転する事だって可能だぞ。        

***

東のフットボールの変革を期待しています。            
そして、これからも日本のフットボールの発展の為に牽引車として頑張
って欲しい。                          

「まず誰が口火を切るのか。」                  
「追う立場になるのか、追われる立場になるのか。」        

もう議論の必要はないはずだ。どこかのチームが新しい取り組みをはじ
め、そして強豪としてのし上がり、東のリーグ自体を根底から変えはじ
める事を待っている。                      

強い関東を見たい。立命館をパワーでねじ伏せ、京大をスピードで圧倒
し、KGのちょこざいなプレーを軽くいなす。そんな強敵を西は待って
いる。今の甲子園BOWLは面白くない。それに何より、こちとらロー
カルの人間にとって、「強い中央」をへこますのが何よりの楽しみなの
だから。                            


                          以 上   


2000年4月8日

ボヨヨン王国
BOYOYON KINGDOM