王立球技場


2005年 観戦記



立命館 VS 京大

近年、分の悪い京大だが今年はそれでも立命に絶対的な存在がいない分、差は少ない方だと認識していた。
この程度の差であれば十分勝機はある。少なくとも最後までもつれる展開にまで持っていけるはずだし正直
五分に近いと考えていたのだが、残念な結果となった。京大や神戸大、金沢大などのチームが劣勢予想の中
で得意の「プレーを捻くり回して勝つパターン」に持ち込むには、アスリートレベルの差がある程度まで詰
まっていないと難しい。この差が一定以上開くと、今年の横浜国立大のように点差は一気に広がってしまう
訳だ。(こうなると凝った組み立てをするよりシンプルで原始的なプレーの方がまだマシになるのだが)。
今年はその意味では十分勝負できる差に留まっていると思ったのだが、、、。

健闘した京大守備ではある。ただし気になった点が一つ。これは答えの出ない問題かもしれないが、この日
の京大守備の基本方針は「後ろで構えて投げさせて止める。」という80年代から連綿と続く対SG守備の
哲学を踏襲したものだ。2002年登場のフラット5ほど極端ではなかったが、後ろを徹底してフタをしに
いった。それを考えると#11へのオプションフェイクパスでSFが下がりきれなかったのは痛恨だった。
以降も要所でミドルをSF前に落とすというこれまた「SG守備に対する定番の立命攻撃」に前進を許すの
だが、結果的には長いのはよく抑えた形になった。これはこれで成功と、一応は言えるのだが、、、、、
そこで素朴な疑問がある。
それは「今回はもっと前で潰しても良かったんじゃないか」という事だ。もちろん3メンである程度プレッ
シャをかけられると踏んだヨミは間違いではなく、事実それなりの圧力をQBにかけることに成功している
(これはこれで立命攻撃ラインの問題でもあるのだが。)しかしそれでも、もう少し前で勝負できなかった
だろうか。そう思えたのだ。一つ目の理由はセカンダリがキャッチ後即タックルが徐々にできなくなってき
ている点だ。パスの成功を許し、その後タックルミス連発でゲインを許すとなると、目も当てられない。投
げる前に潰せた方が今年の守備の特徴を考えると本当は良いはずだと考える。二つ目は(攻撃でも述べるが
)原始的な話で、自軍の強いポイントで勝負できないか。相対的に強い部分で戦えないかという点だ。
前出の通り3メンラッシュである程度抑えられる立命攻撃ラインと京大守備フロントの力関係がある。加え
て立命先発QBのチームへの浸透度と経験・プレースタイルを考慮するとどうだ。アスリート能力が高いの
でスクランブルに追い込むとかえって苦しいかもしれないが、素早い判断を要求される局面では立命攻撃は
上手く機能しなくなる可能性が残っていた。経験そのものは十分なので決められたプレーは十分こなすQB
なのだが、上手く機能不全に追い込める可能性はある。そうすればFGでジワジワ点差が開く代わりに敵陣
での攻撃機会が一度は増えた可能性もある。事実、立命#88へのスローバックスクリーンに飛びついてビ
ンゴしたプレーや#22のスピードスイープをLOS手前で仕留めるなどのシーンがあり、それを見ると京
大守備はフロントでの勝負も十分期待できたと思うのだ。特に試合終盤の思い切りの良いペネトレーション
は印象深い。これとDBのタックルミスのリスクとキャッチ後のランで振り切られるリスクを比較して考え
ると、「投げさせる守備」が本当に正解だったのかという疑問が残るのだが、いかがだろうか。
ちなみに....後ろで網を張った京大守備は前半にTDを許すも試合途中からはエンドゾーンは割られな
くなった。ただしFGを奪われつづけた。一方、前でしかけた関大守備は要所でKG攻撃を退けたが、その
効果が出てきた時にはすでに点差がつき過ぎていた。

さて次は本題の攻撃だが、京大の攻撃の不調が気になった。それもアスリート能力差云々ではなく今年はコ
ールそのものに疑問が残った。アスリート能力に差があるのは何万年も前から分かっているので今更書いて
意味が無い。劣勢を強いられるのも承知の上である。それをコールと集中力で捻じ込むのが持ち味だ。
前半オプションを見せるも早いペネトレートからキープマンの走路が膨らみ勝ちになり、ピッチのタイミン
グも角度も乱れるシーンが散見された。ノーフェイクのリードオプションで果敢に攻めても徒競走では勝て
ない分、仕掛けが無ければ出ない。当然「そうか、いきなりオプションの組み立ては難しいのだな。ではパ
スはどうか。」という点に興味が移る。でパスを試みる。「結構ラッシュがきつい。厳しいか。では,ロー
ルしてみたらどうか。」という思考になる。で、ロールする。するとまあ意外なほどプロテクションがもつ。
結局ロールからのパスについてはQBが十分な時間を得ながらターゲットに投げ込めず散発的なゲインに留
まった。もちろん投げ込めなかったQBの責任は大きいのだが、一番ひっかかったのは「QBがロールから
走ればいいのに走らないのはなぜ」という点だ。
ロールしたQBに時間を与えてしまうのは守備にとってかなりマズイ。この時に走力のあるQBがロールか
らポンプアップしてキープすると守備はさらにしんどくなる。ゲインそのものは別に10Yも20Yも出る
事は期待していないが、確実に4〜5Y稼がれるのは守備にとって厳しい。ゲインできれば以降、ロールし
た際にレシーバがフリーになりやすくなる。これは最終的にQB自身を楽にする事になる。何時、決めうち
キープに出るのか期待したが最後まで出なかった。何度もロールしたが、ロールすれば必ず投げて終わりだ。
(ちなみにロールでQBに余裕があったのを見て、ロールキープとスプリントドローまでイメージを膨らま
せていたのだが)さらには、このロールからのパスが精度を欠き、結果ビンゴも喫する事になったのだが、
ここでは「同じルートに同じレシーバを走らせすぎ。別のルートを用いないのはなぜ?」という点が気にな
る。このエース鋤崎は立命DBと十分勝負できるレベルにあるWRだった。QBロールからスローバックで
鋤崎へのロングポストを投じたプレーがあったが、その際に彼が十分勝負できるのは確認できているはずで
ある。私はてっきり鋤崎がロングパスで勝負できるかどうかの検証の為にコールしたのだと思っていた。よ
って以後、要所で奥を狙うパスを必ずコールし守備をストレッチするのに用いると予想したのだがどうも違
ったようだ。LINE OF FIREに入られやすかったり、投げ込みにくかったりするルートを(しか
も同じ選手で)繰り返すより、パクられてもダメージが低く且つ、パスそのものが決まれば即得点機となる
パスルートを選べなかったか。いわく手前に入ってくるのではなく、奥に抜けていくパターンを多くコール
できなかったのか。この方が立命守備は嫌だったはずだ。ロングポストを警戒する立命セカンダリの手前に
入る事を狙ったのかもしれないのだが、スピードのあるディフェンダの揃う守備陣のカバーを縫ってミドル
を投げ込む方が難しいだろう。そもそも同じタイミング、同じルート、同じ選手では相手守備も慣れてしま
う。もちろん時間を与えられながら投げ込めないQBにも問題があるのだけれど。
また、同様に「分かりやすい事をしては競争で絶対負けるのにミエミエな事をしすぎ」という点も気になる。
3rdロングを残してしまうケースが目立った。もちろん好きで残している訳では無いだろうが、この3r
dのコールはオプションでストレッチ出来ていない以上、プレーの選択肢は一気に限定される。ミエミエの
パスの状態ではいくらQBがロールしようが持つわけが無い。投げますからラッシュしてくださいと言って
いるのと同じだ。守備はとにかく「QBにラッシュ」とスナップ前からそれに集中できる。これではしんど
い。仕掛けるならもっと早いダウンでしかけないといけない。
同時に気になったのは、思いのほか工夫が無い点だ。例えば今年の京大のRB陣は相対的にスピードが無い。
宮下とコンビを組ませるバックス陣にバリエーションがつかない。おまけにTからのリードオプションでは
スピード不足で突破できない。となると極論すれば足の速い奴をバックスに持ってこれないかという発想に
なるが、では鋤崎をFLに置いてモーションからピッチマンにしたらいけなかったのか。3バックからのリ
ードでかつ快速ピッチマンをつけている。カウンターの効果も上がるのではないか。フレックスボーンを駆
使した攻撃をみせたチームだ。発想できなかった訳ではあるまい。こんな工夫で攻撃に変化をもたらせなか
ったろうか。最後にQBに走らせて勝つのであれば、その為の組み立てが必要であって、組み立てるにはあ
る程度のバリエーションが必要ではないか。そのバリエーションがあまりにも広がりが無い。特に2年前あ
たりから顕著だ。それがどうも気になる。こんなにバリエーションが少なければ相手守備はラクだ。またプ
レーの精度が安定しない。#1へのクイックパスなどタイトカバーを準備できる立命CB相手には有効であ
ったがいかんせんヒットしない。

これらの事柄が最後まで気になった。無いものねだりなのかもしれないのだが、正直歯噛みする思いだった。
そして攻撃は誰がコールしているのか不明だが、この試合に限っては選手の動きうんぬんよりもコーラーの
消極性を感じた。よく選手の気合が云々とか、選手が精神的に云々と言われる。京大ならではの「選手に対
する批判」ではあるが、この試合に限ってはもっとも腰が引けていたのはベンチではないだろうか。少なく
ともベンチが挑戦したと思えるシーンは無かったように思える。仮に力量差を意識するあまり、自らの力量
を低く見積もりすぎた結果なのであれば、それは実はコーチ陣が重症なせいではないか?もちろん個々の選
手には光るプレーが見られたし、それなりの準備も見られた。QB宮下は想像以上にタフな走りを見せたし、
鋭いリアクションを見せた守備フロントやハードヒットは評価はしたい。これもミエミエながらパントフェ
イクランも繰り出して成功は(するだけは)した。しかし選手にもっと挑戦させても良かったのではないか。
サイドラインもプレーコールで、もっと挑戦しても良かったのではないか。

原始的な発想だが、チームの一番強い部分をフルに生かすのは勝ちを模索する上での一つのアプローチだ。
しかしこれをあえて選択せず、それ以外で無理から組み立てようとしているのではないだろうか。そんな印
象をもった。なぜ思い切りぶつけてこないのか。そもそも京大としての基本的なアプローチを念頭におけて
いないのではないか。いや、避けているのではないかという気がした。頭で色々考えた結果、それを回避し
たのではないか。「言い訳の出来ないアプローチは、言い訳が出来ないので採用したく無い」と。表現を変
えると「頭の中で考える部分」が、少し多すぎたのではないか。その結果、方向がおかしくなったようにも
想像できる。
切り札を大事に保管しておいて負ける。やれる事、やらなければならない事を十分にわかっていながら、や
らず終いにしておいて、結局負ける。これらの事はつまり「やれる事をわざとやらずに終わらせている」の
ではなかろうか。それは何故だ。失うものは無いといいながら、まだ大事に取っておきたいものがあるから
ではないだろうか。「負けたけど、切り札を使わずに負けたのだから本当に負けた事にならない」そういう
言い訳を失いたくないからではないだろうか。それは挑戦者ではない。腰抜けだ。最初から敗北を選択して
いるのではないか。
あれをやって置いたらよかった という後悔。あれをやっていたら勝てたのにという言い訳。試合の後にこ
れらが残っていてはいけない。つまらないプライド。みみっちい希望の光。棄てがたいこれらのモノすら平
然と捨て去る。そうしてようやく失うものがゼロになるのではないか。
彼我の戦力を比較すると絶望的な差が見えたのかもしれない。その結果、考えても考えても差がつまらなか
ったのかもしれない。その為、さらに考えてしまったのかもしれない。根本的な原因は紛れも無く個々人の
能力差に行き着くのではあるが、しかし、考える事と挑戦する事のバランスは決して失ってはいけない。道
のりは永遠に見えるのかもしれないが、そんな「錯覚」に陥りそうな今、京都に必要なのは、それでも挑戦
する事ではないか。
やってみなわからんのに、やらずに終わったら駄目だ。考えた結果やる意味を見出せなかったのかもしれな
い。挑戦自体が非効率に思えるほど追い込まれたのかもしれない。が、それでも「やってみなわからん」の
ではないか。劣勢を跳ね返し、ある種の奇跡を読んだ00年のこのカード@西スタではこのような事は全く
感じられなかった。攻守蹴においてベストを尽くす姿勢がみられた。ミスもあったがそれは積極性の結果生
じたもので、決して後ろ向きなものでは無かった。京大はこういう事ができるから恐ろしい。当時は奇跡と
は思わなかった。十分予想していたし、逆に我が意を得たりであった。現在の京大はそこまでの力は既に無
くなっているのだろうか。本当に無くなったのだろうか。

さて普通に強い立命守備については特にコメントする事は無い。ラン喪失マイナスヤードを誇示した以前程
爆発的な破壊力は無いが、逆に落ち着きを感じる守備になっている。大崩れする様子もなく信頼はできる。
というより、昨年からこのチームを支えているのは実はこのステディな守備なのである。ここが崩れるとこ
のチームは厳しいのだが大丈夫だと考える。
立命攻撃だが、ラインに迫力が見られない。見方を変えて述べると、「ライン勝負をせずにゴール前までボ
ールを運ぶのが板についてきた」というべきか。ただし、これで味をしめると攻撃ラインがいつまでたって
も強化されないだろうしチョコザイなプレーはパワー差の前には限界がある事から、あまり歓迎されない状
態なのは確か。力勝負を挑んで及ばぬ事数回。これでは寂しい。結果FG連発。全て決めたのは素晴らしい
が、EZを割れないのは困ったものだ。
QB渋井はようやく馴染んできたか。少なくともこの試合ではチームとして機能していたし、QBも溶け込
んでいた。ただWR陣はある程度計算はできるものの、昨季程の充実度はさすがに望めない。また加えてラ
インも厳しいとなると、昨年と同様の取り組みでは強豪相手では心もとない。そこで考えるのが攻撃スタイ
ルそのものの変更だ。パスアタックだけで切り開くのではなくバックスのランを上手く混ぜていく必要があ
る。極論すると、得点力の低下を迎えている今、ハイスコアリングを狙うスタイルから我慢比べををして競
り勝つスタイルに変更した方がよいのではないか?ロングゲインではなくコンスタントにダウン更新できる
チームになる。その為にはどうすべきか。QBは走力が高い渋井。パワーもある。当たりも良い。遠投力も
ある。ターゲットチョイスの能力は普通か。そしてラインは当たるブロックはともかく邪魔するブロックは
板についてきた。RBは快速の佃がいる。WRに核を求めないで済ませる攻撃。つまりパスによるビッグプ
レー頼みの組み立てはしないで済ませるには?。
妙手がある。渋井ショットガン イコール KGショットガン2004である。QBカウンターからの中央
突破、スプリントしてのQBカットバックプレー、決め打ちQBドロー、RB佃の負担を減らしながらラン
の比率を増しダウン更新を重ねる。当然WR陣にピッチも飛ぶ。走るWRである。昨年、渋井がスカウトチ
ームをやっていれば、当然河野の指揮したこのSGもこなしているだろう。すると取得も早く完了でき、精
度の高さも期待できる。攻撃に核不在。それでも勝つには総力をあげてのドライブが必要だ。これなら誰か
にすがらなくても、かみ合えば勝っていけると思うのだが、いかがか。


以上



ボヨヨン王国
BOYOYON KINGDOM