第五節:観戦記その1




甲南VS大産大


    1Q 2Q 3Q 4Q  計
甲南大  7  7 14  0 28
大産大  0  0  0 21 21


両チームが多用した体型プロツインI。神戸大も含めてなぜか今年はこの体型を 
多用するチームが多い。これに対する両方の守備の方針の違いが面白い。    

大産大               
   ▽       ▽      

      ▽ ▽     ▽   
▽    ▽ ▽▽▽       ▽
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○    ○○□○○       ○
       ○      ○   
       ○          
       ○          
甲南                

大産大はSBに対してOLBがセットする。これはSBに入る飛び道具#88へ 
のパスをケアする為のものだろう。仮にイカれてもSF#21が止めて一発は防 
げる。点の取り合いを回避したいという狙いがあったと思われる。結局SBへの 
パスは1本許した程度で成功はおろか試投数自体が殆どなかった。狙いとしては 
成功。                                  
しかし一方で甲南オプションに苦戦する結果となった。甲南はノーフェイクのリ 
ードオプションとフリーズオプションを仕掛けたがこれはいずれもウイークサイ 
ド(SBのいないサイド)が殆どだった。大産大OLBはSBをケアして離れて 
セットする為、実質フロントは4−2となるが、大産大守備は、これでもなんと 
かしのげると想定したのかもしれない。もしくはディフェンダーのスキルからの 
判断かもしれない。エースDBである#21をSB対策で上げてしまうと後ろは 
1年生SF#7に任せざるを得なくなる。一方で#7にSBに入る#88とのマ 
ッチアップを任せるのはリスクがある。苦肉の策だったかもしれない。実際反撃 
を開始した4QからはSFを積極的に上げて甲南攻撃をパントに追い込んでいる。

理由は不明だがしかし実際は甲南のトラップやドライブブロックなどの多彩なブ 
ロッキングに苦戦。おそらく想定した以上のバリエーションと精度であったのだ 
ろう。ギブがトラップから出続ける。リードブロックをつけたFBがロングゲイ 
ンを生む。リードオプションではWRがSFを確実に取り、FBがCBを抑えた。
QB大西の思い切りの良さもあって独走を生む結果となっている。       


甲南                 
     ▽        ▽    

     ▽ ▽ ▽         
▽    ▽ ▽▽▽       ▽ 
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○    ○○□○○       ○ 
       ○      ○    
       ○           
       ○           
大産大                


一方の甲南の守備はどうか。大産大のプロツインに対してフロントは4−3で構 
える。しかしSF2枚は通常のポジションにセット。大産大のSBのすぐ前には 
誰もいない状態になる。#88,#89という看板レシーバ、特に#88への一 
発を警戒しての体型と思われる。前半、しばしばディープに投げ込み決まりそう 
なプレーもあったものの、なんとかしのいだのは、このアライメントの効果だろ 
う。これに対して大産大攻撃はSBへのショートパスでヤードを刻みはじめる。 
投げる、受ける、止まる、で「5ヤード」づつゲインするプレーだ。それでも甲 
南SFが上がって来ない。OLBもDEの後方からポジションを変更しない。そ 
の為、今度はTBをモーションさせダブルスロット体型などの4WR体型からの 
プレーを増やし始めた。場合によってはFBも含めて5枚のレシーバを投入して 
SFの前に落とすパスを混ぜてドライブを挑む。これでSFが前をケアすれば# 
88で奥を狙う。下がりきれないSFの裏を取るのだ。....というストレッ 
チを試みた訳だ。                             

4Qに大産大の得点が集中したのには幾つか理由が考えられる。        
4Qになってから甲南は逃げ切りにかかり、攻撃自体がリスクテイクしなくなっ 
た。あれだけ出た3レシーバのI体型を引っ込めプロセットからの展開を準備し 
た。結果ドライブを続けられず(流行のセリフだが)3アンドアウトで終わって 
しまったのが第一のポイント。大産大守備はプロセットからのプレーは比較的対 
応できていたので、無理にダウン更新する事は考えていなかったのではないだろ 
うか。結果、大産大に反撃の時間を与えてしまった。             
もう一つは守備について特にアグレッシブにしなかった点だ。         
後ろで網を張っておけば、どこかで止められるだろうという考えだったと思う。 
ある種中途半端な守備になってしまったのだ。あれだけリードを奪えばそういう 
判断も間違いではないが...大産大#88中村はやはり甘くなかった。藺牟田 
も開きなおって良く投げた。甲南に誤算があったとしたら一発TDの連発で短時 
間で相手に加点されてしまった事だろう。                  

前半から大産大のパスが通る気配はあった。しかしパス中心ではなく、まずオプ 
ションでのストレッチを試みた。これが上手く行かなかったのが悔やまれる。Q 
Bのピッチミスが目立ったのが残念だ。ピッチマンが1年生RBやSF兼任の# 
21植木では厳しいかもしれないが、甲南守備は大産大のオプション攻撃そのも 
のに現時点で脅威を感じていなかったかもしれない。「早いあがりを見せれば勝 
手に崩れてくれる」といわんばかりの早いツブシが続いた。ピッチミスからファ 
ンブルロストし、直後一発で加点された段階で、サイドライン、選手ともパスで 
行くという腹が決まったと想像できる。                   
それまでは(細かい点だが)SBへのパスでドライブの手ごたえを掴みながら、 
、それでも「ダブルスロットにモーションし、SBがプレー開始と同時にドロッ 
プしピッチマンになるオプション(大産大独特のプレーである)」を見せたりし 
たが(これが前出のファンブルロストになる)それ以降は藺牟田のパスと心中す 
るのに決めた。そして腹を括った後は見事だった。特に最後のTDドライブは圧 
巻。「どうせ引き気味に守ってくる。出来れば投げて終われ。投げられなかった 
らスグ走れ。」このような指示が徹底されていたのだろう。藺牟田のスクランブ 
ルが好ゲインを生んだ。ラッシュを浴び、逃げながらもよく投げ込んだしWRも 
よく取った。強肩藺牟田の面目躍如と言ったところだ。            

甲南としては攻撃は終始出つづけた訳だが、ゴール前で取りきれなかったドライ 
ブが続いたのが悔やまれる。FGを全て決めていれば冷や汗をかく事もなかった 
のだから。QBは大西で決定だ。果敢なプレースタイルは好感が持てるしパスも 
良い。TB#29など、甲南らしい「しぶといランナー」の登場で攻撃が面白く 
なってきた。この試合では、ほぼ完封されたが吉田をフル活用する手立てが加わ 
ればさらにパワーアップするだろう。                    
一方の大産大としてはオプションに見切りをつけるのが遅かった感がある。また 
甲南オプションに苦戦した守備はオプション守備の見直しが必要かと思われる。 
近大にも大事なところでオプションから独走を許して失点しているし、この試合 
でも失点はオプションからのロングゲインがキーになっている。前節に続いて相 
手のミスに助けられたとは言え見せ場を作った大産大。攻撃陣は自信を深めたで 
あろう。特に若いレシーバ陣は手ごたえを掴んだに違いない。残り2戦、全力で 
挑戦して欲しい。                             

                                 以上 



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