第四節:観戦記その1
近畿大学vs大阪産業大学
1Q 2Q 3Q 4Q 計
近畿大 0 0 0 14 14
大産大 0 0 0 7 7
手が合う相手というのは世の中には存在するもので、大産大にとっては近大が
それにあたる。攻守ともに総合力では間違いなく上である近大だが、この試合
では自らの試合運びのまずさと要所での大産大守備の気迫が接戦を生んだ。
近大が前半のFGトライを失敗していなければ大差になった可能性もあるだけ
に、ミスが早い段階に出るとなかなか勢いに乗れないという悪い癖が又、近大
に出てしまった。
近大攻撃はRB土手下のランがコンスタントに出ながらも、反則で罰退を繰り
返しドライブ自体の効率の悪さが最後まで続いた。結果プレー数が増えてしま
い、後半だけで3度のファンブルロストを喫する事となった。しかしこのQB
キープ、リターナ、レシーバのファンブルロストは大産大守備の執念も同時に
評価しなければならないだろう。
さて近大の先制点となったプレーはゴール前ギャンブルからツインサイドへの
オプションピッチ。SE,SBが完璧なブロックを放った。すべてのブロッカ
が勝利したプレーだった。甲南戦でもキープレーになったものだが、土手下の
能力もあいまってなかなか破壊力がある。今季の切り札とも言えるプレーがこ
こにきて登場したと言えるだろう。ただ強い年の近大に比較して物足りないの
は手数の少なさだ。パスは今のところ#81頼みの感が強く攻撃バリエーショ
ンがもの足りないような気がする。攻守ともにスキルポジションの卒業が多い
事も問題だろうが、それ以前に攻守ラインのパワーダウンを感じてしまうのは
大王だけか。
攻撃のラインの反則やパスプロを持たせてしまう守備ラインを見ると、そう思
えた。本来の能力を発揮すればもう少しラクに勝利できるはずであるが、なん
となく相手に付き合ってしまう状態になってしまっているように感じた。プレ
ーの精度もあいまってチーム作りの遅さが、印象として残った。とは言うもの
の、ようやく攻撃のスタイルが見え始めた状況である。のこる対3強戦は厳し
い試合となるだろうが、今季なりのスタイルで確実にゲームを進める事が出来
れば、面白い試合になるだろう。
この日の試合、スタジアムに多くの近大ファンが訪れていた。強い時の近大の
試合運びを知っている人が多く、何かやってくれるのを期待しているのだ。残
り3試合でい良いところを見せて欲しい。
一方の大産大。ここまで昨年1位から4位までと対戦したが、KG以外の全て
のチームからTDを奪っている。そしてその全てが藺牟田から中村へのTDパ
スであり、それは全て左のストリークである。96年以来大産大を見ているが
当時のエース脇田以来の不動のエースターゲットの登場と見て良いだろう。
さてこの試合、藺牟田率いる攻撃はかなりしぶとさを見せた。守備の度重なる
ビッグプレーに救われながら同点で4Qにもつれこんだ。これは100%大産
大のシナリオ通りだ。その後ギャンブルから一発で先制点を奪われたのは痛恨
だが、しかし直後の攻撃で磯脇へのパス、そして中村へのTDパスで短時間で
同点に追いついたのは見事だった。
藺牟田はこの試合では最後までポケットにとどまり投げきった。しかし攻撃ラ
インの粘り強いプロテクションは評価したいが、もう少しパスのリリースが早
ければと悔やまれるシーンが散見された。ただし中村の成長もあって、徐々に
本来の強肩が相手チームに対して脅威を与えつつあるのではないか。
また攻撃では1年生が元気だ。RB#33は未経験者の1年生。LOSを抜け
てからのスピードもあるし、パスキャッチのムーブメントも既に自然だ。同じ
くWR#1とともにチーム事情から出場機会が多いが、今季は大いに経験を積
んでもらいたい。また彼らを育てるのはほかならぬQBである。大いに鍛えて
いって欲しい。この試合おしむらくは3Qに敵陣に入りながら得点できなかっ
たのが悔やまれるが、現時点ではパスに頼らざるを得ない状況であり、これが
限界なのかも知れない。もうすこしインサイドのランプレーを出せれば展開は
変わっていただろう。
ゲーム運びの面で、ここ数年DIV1相手に勝利する事に慣れていないだけに
(勝ち方を忘れているとは言わないが)、どこか遠慮があるように思えるのだ
が、いかがか。特に攻撃だ。接戦が目的ではないし、TDを奪うのが目的でも
ない。勝利が目的である。大産大にしてみたら対戦相手は全て上位チームにな
る。遠慮は要らないし、こういう接戦に持ち込んで、それをモノにするのが今
のこのチームの勝ち方なのだから、ある種、それを「自覚」した上で、大いに
暴れて欲しい。
大黒柱の中村に加え1年生バックスの台頭も著しい。磯脇も元気だ。瀬川が完
調であれば藺牟田のさらなる踏ん張りで、攻撃は期待が持てる。ここに来て役
者が揃ってきた。役者が揃えば、いろいろ出来る。パスの脅威に加えてQBを
含めたランニングプレーを上手く混ぜて、「相手守備に的を絞らせない」「相
手守備の対応の半歩先を行く」という得意の展開に持ち込めれば面白い。
それに加えて、立命相手に一時的にしろ、しぶとさを見せ守備陣に期待できる。
確かにこの近大戦で許した2TDの奪われ方に、意外なもろさを感じたし、課
題として残るものだろう。しかし、立命戦での頑張りや京大戦での粘りはフロ
ックではない。この近大戦でも3ファンブルフォースを奪い、又2Q終了間際
にはゴール前2Yを守りきっている。
喪失ヤード云々を誇るものではなく、「試合の中で守備の力でで流れを変える
ことが出来る状況になっている」と言えるだろう。これは成長だ。できれば「
ゲインは許すが失点は許さない優れたスコアリング守備」を目指して欲しい。
この4試合で守備の好プレーに沸く大産大サイドラインを何度も見ている。攻
守が上手くかみ合えば後半戦、全勝も不可能ではない。
KG VS 神戸大
1Q 2Q 3Q 4Q 計
K G 7 16 6 9 38
神戸大 7 0 0 0 7
神戸は明らかにチームに力がついてきている。若手の活躍も今季の健闘の一要
因ではあるが、...何と言うか、チームとしての意思を強く感じるシーズン
だ。3強との対戦では勝利こそ奪えなかったとはいえ、京大を追い込み、KG
からは先制点を奪った。毎試合、毎試合、しっかりと準備をして臨んでおり、
それをかなりの精度で実践できている。自チームの戦力分析をしっかりと行う
と同時に相手チームとのGAPを冷静に見ており、それを埋める為の手立てを
よく考えている。そして、それを思い切り良く実現できているという事だ。
これでこそチャレンジャーである。
NEBで神戸のコーチ陣は多くのものを吸収したそうだ。単なる、トレーニン
グ方法や細かいスキルだけでなくゲームに向けていかに準備するかというフッ
トボールにおいて最も重要な部分を強化できているのだろうか。そんな事を感
じさせる試合運びだった。
さてこの試合、神戸は上述の通り、やりたい放題と言っては語弊があるが、や
りたい事を惜しむことなく思い切ってやってきた。尾崎のパスをビンゴした後
の攻撃ではFGファイクのホルダーのランでギャンブルを成功させるとゴール
前からはプレーアクションでTDを奪うしたたかさ。さらにエンドゾーンでビ
ンゴも見せ、堂々とモメンタムの奪い合いを演じて見せた。後半も開始のキッ
クオフでオンサイドを狙うなど、とにかく揺さぶってチャンスがあったらしか
けてやろうという意欲に溢れていた。
惜しまれるのはリターナのイージーなミスだ。この自陣での2回のファンブル
ロストが無ければ得点は出来なくてもしっかりパントを蹴って失点を防ぐ事が
出来た。それを考えると悔やんでも悔やみきれないミスだったろう。
さてKGだが、一向に調子が上向いてこない。正直な感想を述べると、「今日
の試合は春の試合ですか?」。とにかく何もかもが悪い。仕上がりが悪すぎる。
3ヶ月から半年は遅いように感じた。
ターゲットはようやく#80が核になりつつあるが、登場が遅すぎる。未だに
QBとのコンビネーションが未完というのはどういう事か?また攻撃ラインが
若すぎる。Cが1年生、Gが2年生とはどういう事か。あげくイージーな反則
を(いまだに)繰り返し、自らでペースを崩している。一方守備で健在なのは
DLのみ。LB,DBもとっかえひっかえで何が何だかわからない。若手育成
であればともかく、どうもそうでも無いようだ。
故障者が多いとは新聞などでも目にはするが、もう10月だ。今故障してどう
するのか。今から戦列復帰して満足にプレーできるのか。それに今試合に出て
いるメンバーに集中力が無いように思える。これは心配だ。
昨年も確かにスロースタートだった。しかし攻守に高い実績を持つ選手が控え
ていて、これがフル回転できれば勝機はある。そう思えた。明らかな戦力ダウ
ンである今年、同じような形で成長していっても同じ高さになるのか?
某専門誌ではKGは今年が戦力のピークなどと書いているが、誰がそんな感想
を持つだろう。関西学生リーグはそんなに甘くない。4連覇なんて簡単には出
来ない。再スタートを切る良い機会だったこの試合。今年好調の神戸を相手に
圧倒的な試合をしてようやく片目が開いたと言えただろうに、これではいまだ
に眠ったままだ。次節でこの試合のような内容であればKGの優勝の可能性は
限りなく低いと断言できる。地力で劣る神戸がミスはあったものの、極めてフ
ットボールらしい取り組みで生き生きとプレーをしていたせいもあるがこの試
合でのKGはずいぶん頼りなく見えたし違和感をおぼえた。
さて試合ではTB#6田中及び#32朝山の若手コンビの活躍が光った。2人
とも人に強く頼もしい。#6は体格もあいまって大谷の後継者として注目して
いる。しかし一方でゴール前で押し切れないラインの弱さは相変わらずだし、
パスの成功率の低さも気になる。とにかくドライブできないのである。ゲイン
しても罰退するのである。これだけ仕上がりの悪いKGは始めてみた。もう後
が無い。次節に劇的な改善を求める事はすでに難しいだろう。ほんの数週間で
飛躍的にスキルアップするものでもない。せめてミスを少なく、ステディな攻
守を見せてもらいたいものだ。
以上
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