「鎧球バカ一代」
〜大王の異常な愛情〜
あるいは 私は如何にして心配するのをやめ・鎧球を・愛するようになったか
甲子園熱闘編
さて、そんな訳で1988年甲子園BOWLだ。
で、相手はどこだい?
部室でTVを見る。そうだ、今日ってパルサーボウル録画でTVでやるんちゃ
うか。TV○阪をみる。ノイズがひどい。TVを色々ひねくり回すが限界があ
る。横に人が立つとノイズがましになる。お前そこ動くなよ。見るから。日大
VS慶応だ。慶応が若きQB岩田、大型FB泉田、TB川井で挑戦という面白
そうな試合だったがすでに試合は終盤。前半に大量リードを奪われ後半は互角
も慶応は敗れた。やっぱり日大か。よしよし。
と、思えばこの年は学生フットボール自体、メディアへの露出度が結構高かっ
たような気がするのだが。
たとえば。
この年の秋の事。
大王達がパートの練習で中央芝生で発声練習をしていると、なにやら見覚えの
ある人が向こうから歩いてくる。
建ちゃんだ。
取材を受けているらしく記者とカメラマン1人ずつがついてきている。
さて、声だしも終わったから部室にいってシナリオの読み合わせでもしようか
と思ったら、こっちにやってきた。
カ 「写真いいですかねぇ?」
ボ 「は?」
なんでも雑誌に載せるのに「学長と中芝で会話する学生」の絵が欲しいらしい
のだが。
ボ 「ん?どうする?Bちゃん。」
B 「う〜ん、..そうだ4年生に映ってもらおう。」
この日は引退した4年生の方(女性ばかり3人。皆さんおきれいな方ばかりで
す。ヨイショ。)が、たまたま参加していた。まあ、大王が一緒に映るよりは
見映えがするだろう。部長のBちゃんの意見で時計台をバックに(めずらしく
)スーツに帽子姿の建ちゃんと4年生が談笑という絵が撮影された。
B 「どこの雑誌やろか」
ボ 「タッチダウンちゃうか?」
と思ったら、秋のシーズンが始まったある日、ディレクターのKが、
K 「オイ、N誌にアメリカンの記事のってるで」
N誌といえば、自称「総合スポーツ誌」で有名な、「野球、サッカー、ラグビ
ー、F1、ボクシングしか特集しないうえ、プロレスは載せるのにアメリカン
は全く無視するので有名な」あのN誌だ。
さっそく生協に買いに行く。
なんと6ページもさいている。「アメリカンフットボール3人の指揮官」とい
うタイトルだったように思う。すごいねえ。あの「アメリカンと言えば、日本
のプロ野球とのドラフトやFA制度、年俸制の比較でしか登場しないし、スポ
○ラ誌と提携しているくせにスーパーボウルの記事もほとんど載せない、たま
に載ったと思えばジョー・モンタナしか出てこない」あのN誌だよ。
まず篠竹監督、続いてやぐらの上に座る水野監督、最後が建ちゃんだ。そして
例の写真が掲載されていた。キャプションは「女子に人気の関学だが屈強な男
子がいないのが悩みだとか」。そうかい、屈強でなくて悪かったね(笑)。日
大の篠竹監督と比較して「むこうが赤鬼ならこっちはライトブルーの青鬼とい
ったところでしょうか(笑)」という建ちゃんの一文が妙に印象に残った。
たとえば。
週間プ○イボーイに関京戦の記事が載る。今年は東海、屋敷といった選手が抜
けるからチャンスだ。「でもねえQB藤田やWR福島がいるから強いんですよ
」「ええ〜っ。監督そんな事言わないで」といういかにもプ○イボーイ的な作
りで1ページ半。写真はQBカウンターで走る「関学の指令塔QB溝口」のも
のが掲載されていた。
たとえば。
関京戦の後にでたフ○イデー。試合後のエール交換で並んでいる選手の写真を
デカデカと載せて「なんだこの坊主頭の集団は!」「実はアメリカンフットボ
ールなのです」しかし甲子園では関学の勝利だね。なって言ったって「甲子園
ボウズ」だもんね。という、いかにもなキャプションで終わり。笑った。
***
さてフットボールが面白い。甲子園まで日がある。神戸ボウルも見に行った。
王子陸上へ行く。
(注)王子公園はKG発祥の地です。三田なんか行かないであの原田の森に戻
った方がよかったと思うのだが。まあ、三田移転問題は当時学内でも紛
糾しました。同じ神戸市に金払うならね、良いところに行くべきだった
よな。
なぜかと言うと一年前のTD誌で、電工VSシルバースターが好ゲームだった
とあったのを思い出したからだった。
まあ〜寒かったこと。シルバースターサイドのバックスタンドでみた。メイン
は電工の大応援団が陣取る。賑やかだ。電工はこの年からユニフォームを一新
。A&Iのマークが入り現在のスタイルになった。QBは大ベテラン西村。他
にRB伊佐、川口、WR上田、時崎、DBに近大の名ランナー田附、同志社柚
冬がいる。シルバースターはWR秋山、大用、TE脇田、RB東松、QB田村
など。前年のQB大高が抜けたが強そう。
バックスタンドはほとんどスタンドではない。ただの丘だ。ひなたをを見つけ
て立って見た。期待した試合だったが、しかし内容は電工の圧勝だった。攻守
ともに圧倒されたシルバースター。唯一の見せ場は後半のリターン時にリバー
スから東松が独走してゴール前に迫った時だけ。しかも無得点。
シルバースターの応援でチアが来ていたが、すぐに攻撃が終わってしまうので
守備の時にファーストダウンコールをしてしまったりとご愛敬でした。
この時の西村は貫禄があった。淡々とプレーを進める。自分で走る訳でもない
し、パスも凄い訳ではなにのだが、攻撃がドンドン進む。うまくバックフィー
ルドを使って攻撃を指揮しており、社会人の渋さを感じた。
この試合は深夜K○Vで放映された。大王も茶色のオーバーを着て、寒そうに
映っていた。これで東京スーパーボウルは電工VSレナウンローバーズの組み
合わせに決定した。
***
さて、なんだかんだ言って甲子園BOWL当日。
快晴だった。実況を担当したNが徹夜で並ぶ。「前から3番目でしたよ」。や
るねえ。当時は全席自由席だった。中学の招待試合が終わる。メガホンが配ら
れる。1年生が一生懸命応援歌を覚えている。オイオイ、うちの部員はコンパ
や合宿でいつも歌っとるだろうが。ブラスの後ろに座る。が、高さが無い。
ボ 「いまいち不満である」
で、K、Nらとともに1塁側の高い所へ移動。ほとんどポストの後ろだ。
いよいよ選手がフィールドへ出てくる。アジリティー開始。すると....
来た!!日大入場。大勢いるぞ。当然だ。上下真っ赤だ。これも当然。
例によって4列縦隊でフィールドをグルグルランニングする。声がでかい。威
圧感がある。白いコートの男が仁王立。篠竹だ。
まけずにこっちもデモンストレーションだ。埜下とRB渡辺が並走してピッチ
しあいながらレフトスタンド前を往復する。レフト側大歓声。
すると埜下落球。すかさず、
K 「埜下、落とすなぁあ!」
場内大爆笑。
いよいよ開始だ。試合に先立って2つの風船が飛ばされる。日大とKGの風船
(というよりアドバルーンか)だ。拍手とともに飛んで行く。するとKGのは
途中で屋根だったかポールに引っかかって一瞬とまった。日大のはグングン上
昇していく。
ボ 「オイオイ」
上空を見上げながら場内騒然となる。縁起でもないぞ。すでに客席はお祭りモ
ードだ。落研がハッピを着て試合そっちのけで一升瓶一気をする別名「甲山一
気」が始まる。死ぬなよお前ら。すでに縫いぐるみや、かぶり物集団はハイテ
ンションだ。応援の横断幕も沢山貼られている。中には「○○ゼミ 次回レポ
ート締め切りは○○日」という意味不明のものもあり。これもアリだよな。
さあ、キックオフだ。地鳴りのような大歓声が断続的に響く。
KGがレシーブ。リターナーは埜下と小倉。第1シリーズはQB溝口。#32
杉原へのパスがインターフェアになり罰退もTB#4橋本へのオプションピッ
チが飛ぶ。右オープンをロングゲインでダウン更新。
ボ 「おお!速い!」
K 「今日は橋本さん調子ええぞ」
さすがジャックカーチス杯ランナー。1プレーごとに大歓声だ。しかしこの攻
撃は点に結びつかずパント。で、日大の攻撃だ。もちろんショットガン。しか
し様子がおかしい。QBは#10山田じゃないの?アリ?山田はいるなあ。?
あれは?#11か。
???
#10山田、#34山口の間に#11宇田川がセットする体型だ。ビアのバッ
クに山田、山口がアップライトスタンスでセットしQBがそのまま下がって深
い位置にセットするような感じだと思ってください。
(注)これがゴールデンドラゴンフライという体型だそうな。
スナップは#10と#34に集中する。このランプレーがずるずると出る。
KGは5−2で守るが押さえ切れない。投げない。投げない。まだ投げない。
と思ったら投げた。通った。オイ〜。頼むよお。
しかしここは守備が最後に踏ん張って無得点。しかしKGの返しの攻撃もWR
#6がゾーンにシームに入る絶妙のパスがオーバースローでパント。日大自陣
からの攻撃が始まる。その第一プレー(すいません。ひょっとしたらパントリ
ターンだったかもしれません。)で日大1年生QB#15松本(現リクルート
)がファンブル!。
KGリカバーだ!。
ボ 「よおおおおおし」
と、KGはQB#14を投入。ホーラ走った。また走った。ドンドン進むがド
ンドン遠ざかる。見えんぞー。しかし圧巻だったのは日大DB#5のタックル
を弾き飛ばしての埜下のゲイン。さあゴール前だ。やっぱり埜下がダイブ。
どうだ、入ったか、入ったか。ここからじゃ分からんぞ。どうなんや。
ピピー。
おおおおおおおおお。
レフト側で歓声が上がる。
先制TDだ。
ボ 「よおおおおおおし」
一方の守備は厳しい。返しの日大の攻撃にドライブを許す。山田、山口がスイ
スイ走る。立て続けに2TD奪われる。そこでようやく気が付いた。#11宇
田川はダミーだ。3人のうち誰にスナップされるか分からない。しかしボール
は山田、山口に集中している。パスの脅威を見せながらインサイドのランプレ
ーでのボールコントロールなのだ。ディフェンスは突っ込めない。突っ込みそ
うになるとスナップを受けた山田が下がって長いのを投げたりする。これが日
大の怖さか。初めて恐怖を感じた。
ボ 「これは....怖い。何をしてくるか分からん」
14−7と逆転TDを目の前で奪われた第2Q。日大のキックオフで再開だ。
KGはライト側からリターンする。
日大キック。ボールがはるか彼方へ飛んで行く。青い壁が向かって来る。赤い
壁が向かって行く。ぶつかって止まって壁が出来た瞬間、その壁が真ん中で真
っ二つに割れた。そこに青い点が1つ残っていた。こっちに向かってくる!
遠くで歓声が起こる。そしてレフトスタンドからの大歓声があっという間に自
分の所へやって来た。
来た!!22番だ!小倉だ!!独走だ!ドンドンやってくる!
ボ 「オグラァアアアア!」
埜下がリードブロックする!走れ!走れ!頑張れ!
っと、残り10ヤードを残して捕まった。目の前で転がる#22。しかしスタ
ンドは大騒ぎだ!TDコールが巻き起こる。正直やかましい。サイドラインの
選手がスタンドへ向かって、声援を押さえるようジェスチャーする。
誰も見ちゃいない。思わず叫んだ。
ボ 「みんな静かにしてくれえ!!」
誰も聞いちゃいない。やかましい中、埜下がスニークでTD。
同点だ。
大歓声。会話にならん。前半最後のプレーでKG守備がインターセプトも時間切
れでハーフタイム。
面白くなって来た。
と、報道パートの後輩がボソッと呟く。
「なんや〜、引き分けか」
すかさずKがシバいた。もっとシバいてくれ。前半が終わっただけだよ。バカ。
KGが劣勢なのは明らかだ。しかしひょっとしたらという気は十分もてた。
(注)SB#22小倉は甲子園ボウル前のKGスポーツの談話で「日大は個人的
には怖くない」と言い放った人だ。ちなみに前年の春の定期戦ではリター
ンTDをあげていた。なるほどね。
後半開始だ。KG攻撃は波にのれない。要所で#4がピッチから快走するが、反
則で罰退とダウンを更新できない。なんと言ってもパスが決まらない。3Qは無
得点。かたや日大は1TDをあげる。
KGは守備が日大を止められない。#10は何回キャリーしたろうか。
で第4Q。日大の得点は28点になっていた。KGは再度埜下をQB投入。榎並
、三木、でインサイドを突く。ズルズルと出始めた。ダウン更新。よしよし。で
、右への#4へのピッチ。これが、抜ける!ライト側へむかってドンドン走って
行く。見えん!見えんがまだ止まっていないらしい。歓声が上がる。
「タッチダウンです!」
よおおおし。一本返したぞ。日大28−21KG。まだ分からんって!。
続く日大の攻撃を押さえてKGの攻撃が始まる。また埜下だ。いいぞ。走れ。
左にロールしてのランパスだ。アウトを走る#6へ投げた!DB土谷がパスコー
ス走り込んでくる!捕られた!
ボ 「ああああ〜。のしたああああ。」
悲鳴とともに一気に萎む大歓声。
KG自陣で日大攻撃開始。辛抱できずにTD献上。35−21。リードが広がっ
てしまう。
くそー。時間が無い。
KGはついに溝口、埜下併用にでる。QBは溝口。ワンバックでアイランド体型
をひく。杉原、甲木の後ろに埜下がセット。と、逆サイドのTE目黒にパス。成
功。次は同じ体型からスローバックで埜下へヒッチ。ブロッカを使い爆走、ダウ
ン更新。あああ時間が無い。QB埜下でオプションキープでダウン更新。ゴール
前ににじり寄るKG。溝口でパスにでる。おらん。捕まる。急げ。もう一回だ。
パスにでる溝口。おらんぞ!スクランブルだ!。タックルをかわしダウン更新。
ノーハドルで杉原へアウトパス。成功。外に出る。時計が止まる。最後は埜下が
飛び込んだ。どうや、どうなんや。見えんぞ。
ピピー。
おおおおおおおおお。
レフト側で歓声が上がる。
「タッチダウンです!」
よおおおおおし。日大35−28KG。
しかし残り1分だ。もちろん村上はオンサイドキック!しかし.....。
万事休した。
試合終了。
負けた。
やっぱり日大って強い。本当に強い。
(注)負け惜しみ。後日この年の春のヨコハマBOWLをVTRで見たのだが、
実はこの時から#4橋本へのフリーズからのピッチを日大は止める事が出
来ていない。溝口にもスクランブルを数回許していた。日大はオプション
対策が苦手なのだろうかと漠然と思い出したのはこの頃から。
ミルズ杯はQB山田。よく走った。文句無し。
(注)3年後もやっぱりKG相手によく走ってくれる事になるとは誰も思わなん
だがね(笑)。
おしかったなあ。下宿に帰って大公様と連絡をとる。やっぱり見に来ていた。自
分が見に行くとKGは大抵負けるので機嫌が悪い。「まあ、実力じゃのう。」は
いはい。ちなみに大王妹はこの日の事を覚えているとの事で、聞いてみたところ
「ん〜、なんか寒いところでトンカツ弁当を食べていたような気がするねえ。」
お前それは覚えているとは言わないよ(笑)。
以降の試合はすべてTVで見た。
東京スーパーボウル。レナウンが一本差で勝利。松岡が骨折でスタートできず、
鈴木隆之が登場。電工西村との大ベテラン対決になった。
(注)まだ2人とも現役でやっている。西村さんの方が鈴木さんより年上だが9
8年シーズンにブラックイーグルスでパスを決めている。スゴイ。
勝負を決めたQB鈴木のラン。終了間際に西村からのロングポストが決まってい
れば分からなかった。なかなか面白い試合だったが中継が下手くそなのが惜しま
れました。試合後、フィールド中央で鈴木、西村が握手したのがなんとなく嬉し
かったな。
(注)TV○日系はなんでこんなにアメリカンの中継下手なんだろう。いまだに
そうだよな。
正月のライスボウルはレナウンVS日大。国立競技場。満員だ。うらやましい。
日大の強さは話にならん。レナウンQB#13松岡が要所でカットを踏みまくっ
て走るが大きなゲインにならない。徐々に点差が開く。松岡、鈴木が奮戦するが
ラインがもたない。後半は日大は余裕。山田、宇田川が下がって須永、松本まで
繰り出した。強さは変わらない。強いなあ。山田が卒業しても変わらないぞ。来
年勝てるのかKGはよ。
カレッジボウルもTVで見た。関東の勝利だったような気がするが違ったかもし
れない。MVPは甲南QB金。柔らかいランニングが印象的だったなあ。
その勢いでスーパーボウルも見た。レベルが違う。でも当然面白い。
KGは89年は強いんだろうか。だって榎並がいない、橋本も小倉もいない。な
んといってもレシーバがおらん上に埜下は波があるし....。不安だなあ。
しかし、はじめてどっぷり漬かったシーズンだった。大王の運命を変えたシーズ
ンだったと言ってもいいかもしれませんね。
4年生だ。
部を引退した。毎日研究室に入り浸る。実験実験また実験。勉強していない大王
はデータをまとめるのに苦労する。いや本当だ。
単位をしっかりとる。
卒論を上げる。
就職を決める。
これが目標。アメリカンどころじゃなかった。おまけによせばいいのに教職をと
ったばっかりに教育実習まである(高校社会)。就職活動も大変だ。景気はいい
のになかなか決まらない。トホホ。
それでも気晴らしに春の関京戦を長居に見に行く。KGはなぜかバックスタンド
だった。これがまた凡戦。7−0でKG勝利も貧攻戦を絵に描いたような試合。
怒りのあまり
「埜下あ!もう投げるな!」
の声が飛ぶ。大丈夫かね。かえってフラストがたまったよ。
さてKGはこの年創立100周年。西スタで記念試合としてエキサイティングK
Gボウルが行われる。KG中VS長浜。KG高VS慶応高。そしてKGVS日大
。3試合を一日で行う。単車を飛ばして見に行く。すでに外野は満員。当時は甲
子園と同じフィールドの取り方をしていた。しょうがないので内野上層で見る。
日大は強い。KGは良いところなし。埜下がドロップからパスにでるがプロテク
ションが持たない。自陣に向かって逃げる埜下。追う日大DL。振り切って敵陣
に向かう埜下。ナイスラン!!と思ったらノーゲインだった。それだけ力の差は
あった。
その日の夜。逆瀬で学科の懇親会があった。大王は体育会のボスの先生のゼミに
所属しているのだが、最初の挨拶での先生のコメント。
「何がエキサイティングKGボウルや!弱すぎてホンマにエキサイトしたわ!」
名言だ。確かに不安な春の仕上がりだった。
総合関関戦はこの年はKGで実施。アメリカンはKGグラウンドで行われた。
当然見に行く。前半は埜下で圧倒。後半は2年生QB東村が登場。#5でQBと
いうのに違和感を感じながらも見ていると、これが凄い。パスは上手いは、スク
ランブルからロングTDランを奪うは、とにかく機動力がある。キッカー中筋も
一年生ながら(村上の#98をついで)よく決めていた。
西宮ボウルは部のOBの方に誘われて見に行った。宰相も一緒。就職が決まらな
くて、気晴らしに行ったのだが、ここでも関西はボロ負けだ。
(注)宰相は学校が好きなのでもう1年いる事にしてこの年は就職活動は無し。
高校オールスターから見に行ったのだが、ご父兄は本当に熱心だ。熱心なだけで
なくフットボールも詳しい。
「KG(ここでは高等部)最近アカンねえぇ」
「どうしちゃったんやろうねぇ」
かと思うと
「そうそう、あのキザなクオーターバック、なんて言ったっけ」
「渡辺よ渡辺!」(注)明治の元QB渡辺の事だろう。
「男前やったけどねぇ」
「いやー私はすかんかったわあ(笑)」
「ぎゃははは」
面白い。宰相と大笑いした。
(注)こういうご父兄方が関西のフットボールを支えているのです。
さて関西VS関東オールスターだが......。関西は埜下、堤(同志社)、
宅和(京産)によるゴールデンドラゴンフライをみせたが効果無し。本来お祭だ
が関西側スタンドは一層お祭り色が濃くなる。
「ははは、こりゃ勝てないねえ(笑)」
陽気な雰囲気がスタンドを包む。ビールがうまい。なんかしらんが観客は皆、楽
しそうだった。爆笑のヤジが飛ぶ。子ども連れの父親が酔った勢いで子どもを真
上に放り投げる2m近い「高い高い」をしていて笑った。
で、ここで出たのがロンリーセンターだ。
○ ○ ○ ○○○○○
○ ○
○ 埜下
QB堤
トリプルセットサイドに投げる。埜下に投げる。これでもダウンを1回更新する
に留まった。力の差は歴然。完敗だ。甲南のWR中村元の応援団からのゲンさん
コールが印象に残った。やれやれ。こりゃ今年の甲子園も勝てそうにないね。
この頃から社会人の試合もTVでやるようになる。西日本社会人の決勝では電工
相手に芝川率いるサンスターが大健闘。そりゃ榎並、橋本はいるわ福島、泉、植
木と関西オールスターだからね。長居でのナイターだったかな。サンスターは逆
転のチャンスで芝川のパスがビンゴされたのが痛かったね。あそこはランだぜ。
さらにサンスターVS京大。これも長居でのナイターだった。京大はQB藤田。
しかしサンスターは強い。泉は藤田を連続サック。植木もビンゴ。京大OBは容
赦が無い。サイドラインで植木と肩を組んで座って笑っていた泉。いい笑顔でし
た。京大は苦しそうだったな。良いところが無かった。
逆に好調さを聞いたのは近大だ。オリンピックイヤーに強いと言われたが、4〜
5年に一度、べらぼうに強くなる。これでも関西学生リーグ優勝2回だ。いやー
な予感がした。
***
ようやく就職が決まり、後は卒論一直線だ。秋のリーグ戦が始まる。
試合は見たいが実験で見に行けない。TVで見るしか無い。
しかし申し訳無いがひどいシーズンだった。勝つには勝ったが、僅差の試合ばか
り。点を取ると取られる。守備が押さえると点が取れない。こんなに心もとない
試合運びを見るのは初めてだ。
同志社戦をTVで見た。勝ったとは聞いていたが内容は完全な負け試合。逆転に
次ぐ逆点という展開だったが、同志社QB堤の指揮するドライブには集中力があ
った。自らエンドゾーンに持ち込みTDを上げガッツポーズ。強い。
何せ日大桜からショットガンQBを始め、高校決勝で埜下率いるKGHに敗れた
という過去がある。打倒KGを胸に日大に進まず同志社に来た。88年にその夢
はかなえたが、やはりKG戦に対する思い入れは特別なものだったのだろうな。
後が無いKGはリターナーに1年生の竹口を投入。これが当たってロングリター
ン。辛くも勝利した。埜下のヤケ気味のロングパスを秋吉(だったと思う)が競
り合ってキャッチしたのを覚えている。心臓に悪い試合だった。
一方京大は苦しいシーズンだった。村田は試合に出場せず。藤田も調子が悪い。
QBは佐野の出番が増えた。そして近大戦、京大は敗れた。長居だったと思う。
近大のオプションが止まらない。パスもドンドン進む。QB浅井はパサーという
よりオプションで持った時の方が怖かった。強い時の近大ってこんな感じなんだ
なと漠然と思った。
この年も関京戦と学祭の日程が重なった。この年はも実況中継が行われたが、部
の企画ではなく学祭実行委企画で行われた。当時のTDの記事で紹介されていた
のを覚えている。大王、宰相は引退したので絡まなかった。ディレクターはKが
担当した。甲子園球場で行われた試合だったが、ここでもKGは良いところ無し
だ。劣勢の京大が藤田、佐野のダブルパスで仕掛ける。KG攻撃は波に乗れない
。結果は3−3。負けていたら近大とのプレーオフだった。見ていて辛いシーズ
ンだった。
さて学祭最終日と神戸ボウルのが重なった。OBのCさん(某スポーツ紙記者)
に誘われて宰相とともに見に行く。なんとカードは電工VSシルバースターだ。
何といっても注目はQB東海、WR堀古だ。これを見逃す手は無い。もちろんバ
ックスタンドでシルバースターの応援。この年は観客が多かったなあ。
試合はシルバースター圧勝。中でも大活躍したのがTE脇田。キャッチアンドラ
ンで走る走る。おまけにショットガン(日大でいうガッドフライ)も繰り出して
東海おお暴れ。堀古と2人でやるTDダンスも楽しかった。電工は西村の引退が
大きく、攻守ともに力負け。シルバースター大復活でした。
さて甲子園だ。と、ある日宰相が購入して大王がせしめてしまったパソコンで、
卒論のデータをまとめているとOBのCさんがいきなり下宿にやってくる。
(注)Cさんが住んでいた部屋をそのまま大王が引き継いだので、Cさんは当時
でも「あの部屋は俺の部屋である」と思っていた。
C 「元気か!!」
ボ 「あーびっくりしたー」
C 「甲子園行くぞ」
ボ 「ハイ」
C 「じゃーな」
ボ 「ハイ」
大王の卒論は締め切りは12月。余裕があったら行く気だったが、無理矢理余裕
を作って行く事にした。
甲子園当日。
寝坊した。イカン!単車で甲子園へ行く。プラグが死んでてスピードが出ない。
あたふたと一塁側内野へ。この年はホームからバックスクリーンに向かってフィ
ールドを取っていた。Cさんを探す。試合は始まっていた。
一際大きな歓声が響く。場内アナウンスが響く。
「タッチダウンです。」
え?
Cさんを発見。
ボ 「すいません、遅れました」
C 「バカ者!!お前が遅いから一本取られたじゃないかっ!!」
ボ 「え?」
バックスクリーンの方のエンドゾーンで赤いジャージがPATのキックを蹴る。
ボ 「ありゃ!もうイカレたんですか?」
C 「バカ者!見れば分かるだろ!」
ボ 「日大はTなんですか」
C 「おう!なめられとる」
ボ 「う〜む。やはり強いか。」
いやな予感は的中。やはり苦しいか。
しかし、この試合こそ、このシーズンで最もKGらしい試合になったのである。
以後 地方奮闘編に続く
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